球宴を境に区切るなら、前半戦の大一番と考えていい「首位決戦」だった。両チームともこの3連戦の後に1カードを残しているが、総力戦になると想像していた。しかし、勝負どころでDeNAの攻撃には「詰めの甘さ」を感じてしまった。

1点を追う5回表だった。先頭の京田が右前打で出塁し、続く戸柱が二塁への内野安打。無死一、三塁という絶好のチャンス。9番の投手・上茶谷は送りバントで1死二、三塁となって、1番でスタメン出場させていた梶原に代打の藤田を送ったが、初球のボール球を引っかけて一ゴロ。関根も三邪に倒れ、無得点に終わった。

このイニングの流れだけを紹介したが「この回になんとしても同点に追いつく」という戦術ではない。まず2番手で登板していた上茶谷に代打を出すつもりがなかったのなら、リリーフした時点での打順は9番ではなく、打席が回ってこない6番の桑原の打順でよかった。ここなら2イニングを投げてもほぼ打席が回ってくる可能性は少ない。9番に野手を据える打順が組めた。

左打者を苦手にしている青柳だけに、代打のベテラン・藤田なら、なんとかしてくれると思ったのだろう。それでも青柳は変則右腕。今季初打席で打つのは難しいタイプ。追い込まれるまでは外角のシンカーに手を出さないのが鉄則だが、初球のシンカーに手を出してしまった。

このとき、阪神の内野陣は前進守備だった。当然、藤田の一ゴロで三塁走者の京田はバットに当たった瞬間にスタートを切るギャンブルスタートのサインが出ていると思ったが、スタートしなかった。

打球を見る限り、ホームに突っ込んでもアウトになった確率の方が高かっただろう。しかしギャンブルスタートなら送球がそれればセーフになる可能性があるし、クロスプレーにはなっただろう。ホームでアウトになっても二塁走者は三塁へ進むし、ギャンブルスタートのサインを出しても同点に追いつくチャンスは残った。仮に京田がサイン通りにスタートを切れなかったのなら京田のミスだし、出していないのならベンチは消極的だったと思う。ちぐはぐな攻撃になってしまった。

バウアーや今永が投げているのなら「流れが悪かった」と諦められるし、リードか同点という状況なら「我慢比べの戦い」として理解できる。しかし負けている状況なのだから「少しでも早く同点に追いつく」なり「一気に逆転を狙う」という積極性がほしかった。そう考えれば、代打は藤田ではなく楠本で勝負をかけてよかった。

攻めるときは攻める。守るときは守る。今後、重圧のかかる試合では、特に攻守のメリハリが大事になる。(日刊スポーツ評論家)