どちらの投手にも、勝ち星をつけたくなるような試合だった。

広島は最多勝争いをする床田、DeNAはすっかり日本野球にもなじんできたバウアーが先発。息詰まる投手戦になると思っていたが、それ以上。ともに、得点が入るような気がまったくしない投球内容だった。

いい先発投手は、ギアの入れどころがはっきりと分かる。床田は6回までに走者を出したのは4度あったが、すべてが2アウトからだった。言葉は悪くなってしまうが、2アウトで走者なしなら、手を抜いて投げているのだろう。先発投手は長いイニングを投げる必要があり、どこかで「手抜き」をしてスタミナを温存する必要がある。相手の先発はバウアーだし、投手戦を覚悟の上で投げていたのだと思う。

4回2死から佐野に四球を与えたが、これは1発狙いでいた打者に対し、慎重に攻めた結果だった。打ち気でいる打者と、見極めを重視している打者の観察もできていた。

もちろん、全力で投げなくても、抑えられる能力が必要。一番の武器は抜群の制球力。特に右打者の外角への出し入れがいい。上からの角度と横の角度の両方があって、低めのボールがよく動いている。三振を取るタイプではないが、ゴロを打たせて取る典型的なピッチャー。ここまで9勝を挙げているだけの実力は十分に感じさせた。

一方のバウアーも日本のスタイルに慣れてきている。初回1死一塁から野間が盗塁を仕掛け、ビデオ判定が覆ってアウトにした。ギリギリではあったが、投げたのは球速の遅いスライダーで、クイックモーションでの成長がうかがえた。このアウトで、広島は盗塁が仕掛けにくくなった。

どういう理由で中6日になったのかは分からないが、123球を投げて10回無失点。登板間隔を詰めていたときは、100球を超えると抜け球が多くなる印象があったが、スタミナも十分だった。バウアーも力の抜きどころと入れどころが分かっているタイプ。中6日であれば、この球数を投げても夏場でパンクする心配はなさそうだった。

床田とバウアーの先発で、両チームとも勝ちたかっただろう。しかし、リリーフ陣も踏ん張って引き分けに終わった。勝てなかったが、負けなかった。この2人が先発の時にどれだけ負けずに戦えるか? 逆転優勝へのカギになると思う。(日刊スポーツ評論家)