優勝争いに向けて負けられない日本ハムと、勝てば大きく優勝に近づくソフトバンクとの一戦だった。試合は1点を争う緊迫した展開で、大一番の戦いにふさわしい内容だった。「こういう試合をしていると、チームは強くなる」と思える内容で、思わず現役時代を思い出して見入ってしまった。
現役時代を思い出したプレーは、初回だった。2死一、二塁で打席は清宮幸だった。カウント1-1から外角低めのカーブを空振りした。その時、二塁走者の水谷瞬外野手(24)が一瞬、飛び出した。捕手の嶺井博希(34)はそれを見逃さずに二塁に送球したが、ベースに入ったショートの野村勇内野手(28)が入りきらずにセーフになった。ジャストのタイミングで入れていればアウトにできたかもしれないプレーだった。
こういう言い方をしたが、別にベースに入り遅れた野村の責任ではない。私の現役時代の捕手は古田さんで、このようなケースで打者が空振りしたときは、けん制球を投げて走者を刺しにいくと打ち合わせていた。特に打者が左打者の場合、ショートは二塁ベース寄りに守っているため、捕手からのけん制球に備えやすい。今試合での野村は捕手が投げる動作に合わせて二塁ベースに入ったが、それではどうしても遅れてしまう。
始めから飛び出しそうな走者に対し、外角に外してけん制を投げようとしても、それだと走者に感づかれてしまう。そのため、こういったケースは“あうんの呼吸”で最初から備えていた。自慢話のように聞こえてしまったら申し訳ないが、嶺井も野村も相手の隙をついたプレーだった。大事な試合で、これがアウトにできていたらチームは助かる。とても高度なプレーだが、アウトにできるようになりたいと感じたなら、できるようになる努力を続けてほしい。
水野の2盗塁も見事だった。1つめは4回1死一塁、水谷の3球目にエンドランがかかり、カーブを空振りしたときの盗塁。2つめは6回1死一塁から水谷の打席で、フルカウントから自動エンドランがかかったときの盗塁だった。どちらもエンドランのときで、この場合の走者というのはけん制球でのアウトを気にするあまり、いいスタートが切れない時が多い。しかしどちらも完璧なスタート。大一番でワンランク上の走塁を成功させた。今後の自信になるだろう。
こういう戦いをしていると、普段ならそのまま何も感じなかったプレーの重要性を感じるもの。大事な試合で勝ちたいという思いが強くなれば、やらなければいけないプレー、勝つために必要なプレーを追求する。重圧にも慣れ、それをはね返せるようにもなる。試合はソフトバンクが逆転勝ち。この試合に限って言えば、毎年、優勝争いをしている地力の差が出たのだと思う。(日刊スポーツ評論家)




