日本ハムが23年春に開業予定のボールパーク「Fビレッジ」と、新球場「エスコンフィールド北海道」の建設現場には、日に日に見物客の姿が増えている。北広島市では、来年春にも「見学ツアー」をスタートさせるプランも検討中。ファンの期待の高まりとともに、同地は早くも“観光スポット”になりつつある。

■建設現場の現状

広大な敷地と巨大な建造物に、好奇の目が向けられる。ボールパーク建設現場には今、週末になると多くの見物客が訪れる。その数は、1日100組をゆうに超える。北広島市企画財政部・ボールパーク推進室の杉原史惟主査(38)は「見に来られる方は多くなっていますね。(実数は把握できていないが)10月18日の現場見学会の時には1200人の方が来場されていました」。道路脇に止まる、レンタカーも目立っていた。

開業2年以上前から、観光スポットのように人を吸い寄せる。道内主催試合はすべてスタンド観戦する沢田昌紀さん(69)は5月の着工以来、2度目の訪問。「出来上がるのは楽しみですよね。魅力のあるものになってほしい。チームに勢いがあると、同時に盛り上がると思うので頑張ってほしい」と、23年の開幕試合を思い描いた。

遠方から足を運ぶ人はもちろんだが、そびえ立つクレーンを間近に見る近隣住民にとっても、ボールパーク構想には夢が詰まっている。日々のウオーキングコースを、現場周辺道路に変えた住民は多い。中学3年の息子が、建設地横の北広島高を受験する予定の南谷好洋さん(55)も「開閉式の屋根も、ボールパーク的な周辺部分も、日本にはなかったタイプの施設。非常に楽しみです」と目を輝かせて、敷地をながめた。

建設現場を息子と見つめる南谷さん(右)
建設現場を息子と見つめる南谷さん(右)

04年の北海道移転当初から私設応援団「日本ハムファイターズ応援作戦会議」をまとめている長谷川裕詞代表(51)も、大きな期待を寄せる1人だ。「球場がコンパクトになりますから(選手との距離が)近い。天然芝で草のにおいもするでしょうし。エンターテインメントのレベルも上がる。収支が変わり、経営も変われば、今までみたいな苦渋の決断で出さざるを得なかった選手も引き留めることもできるし、思い切って選手を獲得できると思う」と、チーム強化にもつながると力説する。

ボールパークへの期待を語った日本ハムファイターズ応援作戦会議代表の長谷川氏(撮影・山崎純一)
ボールパークへの期待を語った日本ハムファイターズ応援作戦会議代表の長谷川氏(撮影・山崎純一)

同氏は世界に誇れるボールパークという壮大な夢を、ファンの立場から、できる限り盛り上げたいと考える。「私の大学の先輩、前北海道教育長を務めた故佐藤嘉大さんが生前に『ファイターズの取り組み、挑戦にどういった価値を見い出すかを決めるのは私たちなんですよね』と仰っていました。これがすべてだと思うんです」。球団が明るく照らす未来のビジョンに、ファンはひかれている。

北広島市では来年春以降を目標に定期的な「見学ツアー」の開催を検討している。「ある程度、足場がしっかりしてきて安全が確保されるエリアができたときには、そういったこともやっていきたい。開業前から観光地として成立するような形はとっていきたいと思っています」(杉原主査)。工事の進行と歩を同じくして、人々の期待は膨らんでいく。【特別取材班】


<日本ハム担当の山崎記者の「純さんぽ」>

ボールパーク建設地周辺を日本ハム担当の山崎記者が歩く「純さんぽ」。今回は、ジューシーなザンギにおなかいっぱいになりました。

北広島市内にあるごちそうさん食堂で人気の「豚しょうが焼きザンギコンビ定食」(撮影・山崎純一)
北広島市内にあるごちそうさん食堂で人気の「豚しょうが焼きザンギコンビ定食」(撮影・山崎純一)

ボールパーク予定地近くの住宅街。食べる幸せにあふれる定食屋をみつけた。「ごちそうさん食堂」。1人で店を切り盛りするのは店主の中郁子さん(59)。定食はボリューム満点でまごころこもったおふくろの味が、学生をはじめ常連客らの胃袋を満たしている。

ボールパーク「Fビレッジ」とごちそう食堂の位置
ボールパーク「Fビレッジ」とごちそう食堂の位置

当店の自慢はなんといってもザンギ。「作りたて、揚げたてを出したい。それが私のこだわりなんです」。外はカリッと中はジューシー。長沼の農家から直接仕入れている米にぴったりで、箸が止まらない。

元々食べ物が好きで、店を開くことが夢だった中さんだが、11年ほど前に乳がんを患った。がんは進行していたが、幸い一命をとりとめ「助かったので、自分の好きなことをやりたい」と、店をオープン。今年で7年目を迎え「お客さんがすごく喜んでくれるのでそれが励み。本当に感謝しています」と目を潤ませる。

ボールパーク建設で新たな夢もできた。「キッチンカーでも置いて、ボールパークの入り口で売れたらいいですよね」。観戦時のビールのお供に名物ザンギ。これはたまらない。【山崎純一】