虎の背番号93と言えば、誰を思い浮かべるでしょうか? 実は記録的な背番号であることは意外と知られていない。この日、育成選手だった西田の支配下選手契約が発表された。快晴の鳴尾浜で「“伝説の番号”を奪われたな」と照れくさそうに笑う人がいた。

 虎風荘の西口裕治副寮長だ。3年間の現役生活を終えた80年オフ、ブルペン捕手に転身。81年から阪神で初めて93番を背負い、08年にユニホームを脱ぐまで28年間も同じ番号を付け続けた。「1回も浮気なしや(笑い)」。この28年間という数字は、縦じまに袖を通した選手や首脳陣、裏方さんの中で最長年数らしい。

 西田が虎風荘に住んでいたころは副寮長と選手、という間柄。自身の息子よりも年下の若虎たちがかわいくないわけがない。「そりゃあ頑張ってほしいよな。みんな、そうやけど…」。そう優しく笑った後、普段は温厚な表情を一瞬だけ厳しくした。「もともとは支配下の選手だったのに育成選手になって、また戻してもらったんやからな。今度は倍、頑張らなあかんよ」。93番が完全に自分の手元から離れる瞬間を、西口副寮長は待ちわびている。【阪神担当=佐井陽介】