プロ野球が30日に開幕する。

 今年も新人たちが、新たな職場に登場する時期だ。

 ロッテの藤岡裕大、菅野剛士はスタメンの有力候補であり、オリックス田嶋大樹、DeNA東克樹は開幕ローテーション入りが確実だ。それぞれが持ち場で結果を出し、壁にぶつかりながら職業としてのプロ野球で奮闘を始める。その姿は、新たに就職する人たちの励みになるだろう。

 思い返せば学生時代、野球に携わる仕事に就きたかった。真っ先に浮かんだのは新聞やテレビなどマスコミへの就職だったが、球団職員、あるいは球団の親会社に就職してからの出向も視野に入れていた。だが、インターネットも普及していない時代。球団職員は募集しているのかさえ分からなかった。こんな悩みは、過去のものとなる。

 パ・リーグ6球団とパシフィックリーグマーケティング(PLM)株式会社が2月、都内で「ビジネスキャンプ2018」を開催した。簡単に言うと「プロ野球版の合同会社説明会」だ。史上初の試みに大学生、転職希望者ら約1200人が参加。個別ブースでの企業説明、若手社員によるトークライブなどが行われた。

 盛り上がったのは、ドラフト会議の形式で行われたビジネス企画コンテスト。女性2人、留学生1人を含む大学生6人が発表資料作成ソフトを駆使し、集客策を競った。(1)友達を勧誘すると割引になるチケット(2)スマホを利用した球場グルメの配達(3)海外旅行客の集客(4)試合開始後に割り引きとなる時差チケット(5)不動産会社と連携し転入者を平日の試合に勧誘(6)球場限定の化粧品販売が提案された。

 ロッテ、西武、ソフトバンクがグルメ企画の信沢克彰さん(東大)に入札、ロッテが交渉権を獲得した。オリックスと日本ハムは転入者向け企画の宮腰諒志さん(早大)に、楽天は時差チケットの葉凌豪さん(明大)に単独入札した。賞として球団幹部との面接シード権が授与され、スポーツ業界への就職を希望する信沢さんは「ぜひ話を聞いてみたい」と目を輝かせた。

 PLM根岸友喜社長(41)は、観客動員が増加する一方で社会全体ではプロ野球への関心度が下がっている現状を懸念し、イベントを企画した。「プロ球団が採用活動をしていることを知ってもらえた。来年も他のスポーツ団体を巻き込んで開催したい。将来は大谷選手のように、大リーグに請われて移籍する職員が出てほしい」。ここ20年で日米の市場規模は5倍近く差が開いた。「フロント界の大谷」になりうる人材が、球団職員を目指すきっかけとなるか。【NPB担当 斎藤直樹】

パ・リーグビジネスキャンプ2018ではビジネスアイデアドラフト会議が行われた(2018年2月20日撮影)
パ・リーグビジネスキャンプ2018ではビジネスアイデアドラフト会議が行われた(2018年2月20日撮影)