ソフトバンク投手陣に松本裕樹投手(22)というニューヒーローが現れた。14年ドラフト1位の松本裕は4日オリックス戦で今季初先発し7回1失点。12日日本ハム戦では今季初勝利を挙げた。本拠地ヤフオクドームでお立ち台に上がりヒーローになった若き右腕だが、何よりクレバーな投球術が目を引く。

 ツーシームやチェンジアップなど多彩な球種をコースに投げ分け打者を翻弄(ほんろう)。「元々、そういうスタイルでした」と穏やかな口調で話す。中学時代はカーブ、スライダー、フォークを持ち球としていたが、高校でツーシーム、チェンジアップなどを習得し現在のスタイルに近づいたという。

 高校時代から150キロ近い速球を持ちながら、繊細な投球術を磨いたのはなぜか。松本裕は「これといったボールがあったら良かったんですけど…。必要だと思ったのでいろいろ磨きました」と明かす。岩手の盛岡大付出身で、高校球界の速球自慢、花巻東の菊池雄星(現西武)や大谷翔平(現エンゼルス)を見て「球が速くても、打たれることはある」と学んだ。その他の球種についても「試合で投げられる程度です。それだけに絞られると打たれる球」と謙虚に話す。

 ところで、松本裕にはアニメ好きな一面もあり、最近は「僕のヒーローアカデミア」を視聴しているそうだ。松本裕が「主人公たちが成長していくところが好きですね」と話す「ヒロアカ」は、簡単に説明すると大半の人間が「手から炎を出せる」「物を宙に浮かせられる」という「個性」と呼ばれる能力を持つ世界で、何も持たない「無個性」の主人公、デクこと緑谷出久(みどりや・いずく)が真のヒーローを目指し成長していく物語だ。松本裕には自分では「武器」といえる物がなかった。だからこそ、自分なりのスタイルを模索し努力した。少し強引だが「無個性」という逆境を力に変えて戦う、ヒロアカの主人公デクの姿と重なるような気がしている。

 昨年最多勝の東浜が故障から復帰し、育成から昇格した大竹、新外国人ミランダも加わった。開幕から苦しんだ鷹の先発陣に希望の光が差してきた。そして松本裕が来た。まだ可能性の残る逆転優勝へ、鍵を握るヒーローになりそうだ。【ソフトバンク担当 山本大地】