打撃練習する日本ハム白村(2019年2月23日撮影)
打撃練習する日本ハム白村(2019年2月23日撮影)

消えかけていた炎が、再び燃え始めた。沖縄・国頭での2軍キャンプ終盤、2月19日。日本ハム白村明弘(27)が、投手から野手へ転向した。紅白戦での登板から、わずか3日後のことだった。「言われてすぐ、切り替えられました。お願いされたのが、監督じゃなかったら分からなかった」。プロ6年目。中学以来の野手へ。急な転身だったが、覚悟を決めた。指揮官の思いが、何よりの原動力になった。

救いの手を差しのべられた気がした。ドラフト5位で入団し、2年目の15年には50試合に登板、1勝1敗15ホールドと頭角を現した。3年目以降、期待を受けながら、層の厚い投手陣の中で埋もれ始めた。「あの頃に戻る。あの頃より良くなりたいと思って、試行錯誤していた」。思いとは裏腹に、最速150キロ超だった自慢の直球は130キロ台まで落ち込んだ。昨季は1軍登板3試合。表舞台に返り咲くための、残された道だった。

春季キャンプ後は2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で、本格的に野手で再スタート。左打ちの外野手として特打・特守の毎日だ。既に退寮しているが、寮で夜間練習にも励む。小田2軍打撃コーチは「前向きに意欲的に取り組んでいる。今の気持ちを忘れてほしくない」。両手に出来たマメは、練習中にテーピングを巻き替えるほど。目の色を変えて、野球と向き合っている。「このしんどい時間が、いつか良いことになる。自分の限界を超えたい」。

奥底にあった意識が、強さを増した。「高校時代は自分のことしか考えていなかった。今は監督が期待してくれている。そっちのほうが頑張れる」。打者1人に向けていた視野が、野手になって広がり始めた。投手→野手の“先輩”である阪神糸井やヤクルト雄平を目指し、今日も汗を流す。「野手になって、水のウマさが違いますよ」。一気に飲み干し、またグラウンドへと駆けていった。【日本ハム担当=田中彩友美】

打撃練習でマメができテーピングをした日本ハム白村の手(2019年2月19日撮影)
打撃練習でマメができテーピングをした日本ハム白村の手(2019年2月19日撮影)