<日本ハム1-5オリックス>◇27日◇札幌ドーム

日本ハム田中賢介内野手(38)が、今季最終戦の27日オリックス25回戦(札幌ドーム)でラストゲームに臨んだ。

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現役生活20年は「子ども」が伸ばしてくれた。15年、メジャー挑戦から3年ぶりに復帰した田中賢の顔つきは、変わっていた。きっかけは14年に誕生した第1子。周囲からは「トゲが取れた」「柔らかくなった」などと驚かれた。他人に干渉せず、わが道を行くスタイルが一変した。

子育てに「生きがいが出来た」。育児本を読みあさり、同じ親の話を熱心に聞く。「3歳までに人間は形成される」と楽しみを見いだし、一家の大黒柱の活力になった。今では2男の父。シーズン中、「子どもからは『一緒に遊びに行けるから』と、引退を悲しまれないんだよね」と笑ったこともあった。

選手生活の終盤はユニホームを着ていても「父親」であり続けた。沖縄・宮古島で合同トレーニングを行うロッテ岡には、食生活まで目をかけた。投手陣の大黒柱・有原の登板時には、ベンチの隣が定位置。アドバイスを送り心身を和らげ、エースを育ててきた。

東京ドームでの現役最後の試合前、おもむろに聞かれた。「引退して寂しい?」。「寂しいに決まっているじゃないですか!」と食い気味に返すと、高らかな笑い声が上がった。まだヤンチャ心は健在。少年は父となり、穏やかな表情でユニホームを脱いだ。【日本ハム担当 田中彩友美】