<オープン戦:ソフトバンク4-5阪神>◇29日◇ペイペイドーム

2月29日。ペイペイドームでソフトバンク-阪神のオープン戦を取材した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため無観客試合。報道関係者も入場時に検温があり、体調チェックシートを記入。通路も選手や球団関係者ゾーンと報道陣ゾーンに仕切られていた。

普段とは大きく異なる光景の試合後、阪神矢野監督はこう振り返った。「難しいのは難しいけど、やりだしたら俺らのことに集中するしかない」。いつ終息するか不透明な状況だが、調整を進めていくしかない。

数時間前、対戦相手であるソフトバンクの王球団会長にあいさつする機会があった。以前、私はホークス担当で、今年阪神担当として9年ぶりにプロ野球担当を拝命。王さんは「どうだい? 今年の阪神は?」と、かつてと同じように気さくに声を掛けてくれた。「チーム構成も20代後半の選手が多くて、今伸びているチームですから、やると思うんですよ」と返しつつ、その後の1試合5発には少々驚かされた。

矢野監督の試合後のコメントには続きがある。「今日みたいな、こんなにホームランが出る試合は、ファンが入ってくれたら喜んでくれたやろうなとか、声援とかがないというのはさみしいなと思う。お客さんのいる中でやりたいというのは、今日やっても実感したけれど、今はこんな状況。自分らは自分らのベストの調整というか、そういう準備をして」。

阪神は昨年、チーム本塁打が94本でリーグ5位。チーム538得点は同ワースト。打線強化を目指し、メジャー通算92発のボーアと昨年韓国球界打点王のサンズを獲得した。そのことで競争が生まれ、チーム力のアップにつながっているように映る。ファンを喜ばせることを重視する指揮官も、このような状況でなければ、日本一球団相手のアーチ攻勢をファンと一緒に球場で喜びたかっただろう。

矢野監督はさらに続けた。「シーズンが始まってお客さんに入ってもらえるようにね。入ったときにね、ファンの人たちを喜ばせられるような準備をしっかりしたいなって思う」。1日も早く日常を取り戻せることを願うばかりだ。【阪神担当 松井周治】