新天地を思い、必死に汗を流す。阪神から戦力外通告を受けた福永春吾投手(26)が現役続行を望み、連日のトレーニングに励んでいる。

11月4日に戦力外通告を受けた際には「NPBの他のチームでプレーできるように気持ちを切らさず、今の自分にできることをしっかりやっていきたい」と、現実を受け止めていた。

16年ドラフト6位で阪神に入団。ここまで4年間で1軍戦登板は7試合と、なかなか結果を残せなかった。チームは若手投手陣も多く、登板機会に恵まれなかったのも事実だ。

福永の武器は最速158キロを計測した威力ある直球。球種は手元で動くカットボール、空振りを奪うスライダーにスプリット、打者の目線を外すパワーカーブなどがある。

1軍での登板機会こそ少なかったが、プロ入り4年間で故障はなく、着実にファームで成長を遂げてきた。新人年の17年は29試合に登板。主に先発を任され5勝をマーク。18年は20試合に登板して規定投球回をクリアし、7勝2敗1セーブ。ウエスタン・リーグの最優秀防御率賞と最高勝率の2冠に輝き、自信をつけた。2軍でタイトルホルダーとなり、1軍での活躍を期待された19年。チーム事情で救援に転向した。この年はチーム2位の44試合に登板。守護神を任される時期もあり、7セーブを挙げた。

今季はチーム最多の30試合に登板し、3勝2敗2セーブ。チーム内が新型コロナウイルス騒動の中でも、黙々とマウンドに向かった。

12月7日に開催される12球団合同トライアウトに参加する方向。来季の構想外を告げられても、下を向くことなく「今の時間こそチャンス」とレベルアップを図ってきた。

「独立リーグ(徳島)時代から、死ぬ気で何が何でもNPBへ! とプロの世界を目指してきた。プロ野球選手になる夢はかなったけど、まだ『1軍で活躍する』という夢はかなっていない。自分は最善の準備をするだけです」

鳴尾浜のブルペンでは、同じタイミングで阪神を去ることになった福留孝介外野手(43)に投球を受けてもらう機会があるなど、周囲にも恵まれた。

26歳。まだ野球を諦めない-。実直に流した汗だけが、その未来を知っている。【阪神担当 奥田隼人】