逆境をはねのけた力が、なんとも、まぶしかった。入団2年目。育成からはい上がった日本ハム長谷川凌汰投手(25)のことだ。開幕直前に支配下入りし、27日楽天2回戦(楽天生命パーク)で中継ぎデビュー。中軸を3者凡退に仕留め、チームの今季初勝利に貢献した。

札幌ドームでの最後のオープン戦2連戦を控えた前日15日。マネジャーから「明日はスーツで球団事務所に来るように」と言われて、緊張が走った。頭の片隅に「支配下契約」の文字がよぎったが、ぬか喜びだったら悲しすぎる。独立リーグBC・新潟からのチームメートで、同じく育成で19年に入団、1年目に支配下入りしていた樋口と顔を合わせても「(球団から)言うなと言われていたので…」。あごの下まで出かかっていた言葉を、慌ててのみ込んだ。

昨季はオープン戦で大活躍。支配下への昇格目前で開幕延期となり、さらに、ぎっくり腰で全く動けない状態に。当然、落ち込んだ。リハビリは散歩からスタート。体のケアを見直し「これまではセルフケアの部分を全く見ていなかった。見聞が広がった」と、今では前向きに捉えている。

生活費を稼ぐのでやっとだった独立リーグ時代、プロ入り後も開幕延期や故障など、たびたび襲った不運を、明るい笑顔で乗り越えた。「使える選手だと思ってもらいたい」。満点デビューで“勝利の方程式”入りに1歩近づいた右腕には、セットアッパーとして必要な強い心が宿っている。【日本ハム担当=中島宙恵】

日本ハム対西武 7回表、無失点に抑え宇佐見(右)とタッチする長谷川(撮影・黒川智章)
日本ハム対西武 7回表、無失点に抑え宇佐見(右)とタッチする長谷川(撮影・黒川智章)
日本ハム対西武 7回に登板の長谷川(撮影・黒川智章)
日本ハム対西武 7回に登板の長谷川(撮影・黒川智章)