プロ野球担当記者の特権の1つは、練習が見られるということだ。キャンプ中でもない限り、練習のテレビ中継はない。子どものころは「ホームとビジターの練習の順番を入れ替えたらいいのに」と思っていた。大人になった今なら、フリー打撃が2カ所でできなくなる(通常ホームは2カ所、ビジターは1カ所=開門後は危険防止のため)、移動ゲーム(移動後、即試合)に無理が生じる、などの理由があると納得している。

本拠地では、チームの練習開始時間より前に、個人的に練習している選手もいる。DeNAの場合、野手なら宮崎敏郎内野手、神里和毅外野手らが早出ティー打撃の常連。捕手や控え選手が特打をすることも多い。投手は三嶋一輝が、早くからグラウンドを走っている姿が目につく。裏で筋力トレーニングをしている選手がいるかもしれないが、見えないので、そこは不明だ。

外国人選手は、早出練習をほぼやらない。これは文化の違いだ。やろうとやるまいと、試合で結果を出せばいい。ただ、毎日、早くから練習している選手を見ると、結果を出してほしいなと思うし、もし結果が出なくても、どこか仕方ないと思える。これが正直な気持ちだ。だから、なるべくツイッターなどで、選手が練習しているところを紹介したいと思っている。

宮崎は大和に次いで、年長から2番目の32歳だ。毎日早くから練習して、さらに全試合出場で疲れないのだろうか。「特には(疲れていない)。毎日同じ体じゃないです。体と相談しながら、チェックしながら、形を決めてます」。何をチェックしているのか聞くと「教えられません」。3安打3打点と活躍した7日の阪神戦前も、ティー打撃の後に、バックネット裏のガラスに自分のスイングを映して、入念に素振りをしていた。

守護神の三嶋はこの試合、点差が6点に開いたため、出番がなくなった。だが、点差が詰まっていたら、きっと9回に登場したはずだ。試合終了の9時間前、外野に誰もいないような時間からダッシュを繰り返していた。1人で集中するため、ビジターチームがまだ誰も来ない、三塁側のブルペンで体幹トレーニングをしていた。31歳の誕生日。サプライズで練習中にケーキで祝福されたが、輪が解けると、またもフェンス際を走っていた。

宮崎も三嶋も、プロ野球選手としては比較的、身長は低い(宮崎は172センチ、三嶋は176センチ)。ともに20代後半になって遅咲きの花が咲いた理由は、この練習量にあるのでは、と感じ始めている。

ちなみに、三浦大輔監督(47)もこの日、早出で遠投やキャッチボールを行っていた。その後、宮崎のティー打撃に寄り添っていた。どんな話をしていたのか。「世間話をしていただけ。僕は打撃の技術的なことは分からないから」。番長監督は、いろいろな場所で、時間で、投手とも野手とも裏方さんとも会話をかわしている。試合後、宮崎が言った。「(結果が)いい時も悪い時も、ずっとベンチの雰囲気はいいです」。練習から、雰囲気づくりは始まっている。コロナ禍で、記者が選手や首脳陣と言葉をかわす機会が極端に限られている。だから、練習を見て、あれこれ考えるのは面白い。【DeNA担当 斎藤直樹】

7日阪神戦の試合前練習でキャッチボールをするDeNA三嶋(撮影・横山健太)
7日阪神戦の試合前練習でキャッチボールをするDeNA三嶋(撮影・横山健太)