広島大瀬良大地投手の実戦復帰は見方を変えれば、捕手中村奨成の勉強会のようだった。

右ふくらはぎ負傷から回復。11日のウエスタン・リーグ中日戦で1カ月ぶりに実戦登板したエースは、捕手からのサインに1度も首を振らなかった。打者を打ち取っても、安打を打たれても、マウンドから言葉やジェスチャーで何かを伝えていた。先発投手はベンチに帰れば通常ベンチ奥に座って次のイニングに備える。だが、この日の大瀬良は最前列に座る中村奨の隣に座った。「配球の面、僕の投げミスの面、そういったところを毎回ベンチに戻って話をしながら。彼もいいステップを踏んでもらいたいなと思いました」。反省会は毎イニング見られた。

復帰登板とはいえ、結果でアピールする立場ではない。2軍は1軍のような結果至上主義でもない。ただ、1カ月ぶりの実戦であり、1軍昇格へ弾みをつけたいと思うのが自然だろう。不安も全くなかったわけではないはずだ。だが、結果よりも、後輩の経験を優先させた。

「結果も頼むと言われたら、首を振って違う配球でいっていたところもある。それで打たれたかもしれませんが。別にそこ(失点は)気にしてないです」

大瀬良に思うところがあったのだろうと推し量る。中村奨は2軍降格となる9日まで、1軍では捕手として出場していない。課題とされるリード面が理由とみられる。経験の浅い捕手にとってエースと公式戦でバッテリーを組む経験は貴重。しかも、全て自分の配球通りに投げてくれることで得られるものははかり知れない。4年ぶりの2軍登板は、1軍復帰に向けて患部の不安を一蹴しただけでなく、捕手として伸び悩む後輩への置き土産にもなった。【広島担当 前原淳】

広島中村奨成(2021年4月25日撮影)
広島中村奨成(2021年4月25日撮影)