「山賊打線の新スピードスター」の明暗を目撃した。西武ドラフト4位ルーキー若林楽人外野手(23)が、5月30日阪神戦(メットライフドーム)で左膝を負傷して途中交代。同31日に「左膝前十字靱帯(じんたい)損傷」と診断されたことが球団から発表された。

若林は同戦に「1番中堅」で先発。3回1死一塁、阪神マルテの中前打を軽くジャンプして処理にいきワンバウンドでグラブに当てはじき(記録は失策)、直着地後に倒れ込んだ。そのまま担架でベンチへ運ばれて交代。東京都内の病院へ診察に向かっていた。

若林は同22日の日本ハム戦(メットライフドーム)で初の3盗塁を決め、両リーグ最速で20盗塁に到達した。チーム46試合目(自身39試合目)の到達は、その時点でシーズン換算62盗塁の驚異的ペース。球界に新たに出現したスピードスターだけに、チームはもちろん、多くの野球ファンにとっても痛い故障だろう。

その俊足に加え、キャラクターに注目が集まり始めた直後でもある。22日の試合後、辻監督は若林について問われ「半分、宇宙人だと思ってるから」と苦笑い。三盗で大台に到達した場面も「4番バッター(中村)がいるのに盗塁しちゃうしさ」。さらには「(話を)聞いてるのか聞いてるのか分からない。バッティング練習を見てたって、な~んか、ちょっとちゃらんぽらんにやってるように見えたり」と笑いを含んだ声で振り返った。百戦錬磨の指揮官は「(相手投手に)プレッシャーをかけるという部分では大きな仕事をしていると思います」と認めつつも「盗塁はこれからですよ。今、ガムシャラに走ったって、これからが問題。大事な試合でね。ただ走りゃいいってもんじゃない。中身が大事になってくる」と、さらなる成長に期待をかけていた。

中村、山川、森ら豪快な強打者が集う「山賊打線」だが、一方で源田が入団1年目の17年から3年連続30盗塁をマーク。金子も16年と19年に盗塁王を獲得するなど俊足選手もそろう。快足ルーキー加入でさらに走力が増したところで、手痛い離脱となった。現時点で復帰時期は不明だが、18年5月に同箇所を故障した阪神上本の例を見ても、長期離脱を余儀なくされそうだ。

キャラクターにも魅力の見え始めた「宇宙人スピードスター」。まずはじっくりと治療に努めて欲しい。そしていつの日か、そのリスタートを現場で目にしたいと思っている。【遊軍=鈴木正章】

西武対阪神 3回表阪神1死一塁、マルテの中前打をはじいた中堅手若林はアクシデント発生で動けなくなる(撮影・清水貴仁)
西武対阪神 3回表阪神1死一塁、マルテの中前打をはじいた中堅手若林はアクシデント発生で動けなくなる(撮影・清水貴仁)