<楽天4-5ソフトバンク>◇20日◇楽天生命パーク

札幌から始まり福岡、仙台と続いた長いトンネル生活にようやくピリオドを打った。ソフトバンクにとっては安堵(あんど)の1勝だったろう。

もがき苦しむ「王者」にとって、掲げる覇権の旗は降ろすことはできないが、現実的にはAクラス死守が目標となるだろう。12日ぶりの白星も、札幌ではロッテが勝って首位との9ゲーム差は変わらない。

トンネル生活でも工藤監督は努めて明るかった。試合前も試合後も、会見でのキーワードは「明るく、元気に」そして「真剣に」だった。反攻のラストスパートに厳しいムチが入りそうだが、敗戦後も選手を責めなかった。シーズン最終盤に来てから必勝の追い上げを誓う指揮官にとって最大の作戦は「信頼」の2文字ということなのだろうか。

故障復帰の岩崎、モイネロ、森が戻って「勝利の方程式」は整った。問題は中盤までにいかにリードを保つか-。この日は打線の組み替えが奏功。今季初の2番起用となった6年目の川瀬が3安打でプロ初の猛打賞。1点を追う5回には2死から田中将のスライダーを左前に運び栗原の逆転弾を生んだ。チームにとって大きな一打だった。「勝ちにつながる活躍をしようと意気込んで試合に臨みました。打席では塁に出ることだけを考えていました。その結果、3安打で得点に絡むことが出来て良かったです」。9回には先頭打者でヒットを放ちながらけん制で刺された。ベンチに戻った川瀬に工藤監督は何やら声をかけていたようだが、叱りはしなかった。

チームが低迷し始めると、どこからともなく「不協和音」が響き始めるものだが、それを一掃するのも勝利しかない。残り27試合、首脳陣のみならず「チーム一丸」の気持ちをさらに高めてもらいたい。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

楽天対ソフトバンク 5回表、逆転の2点本塁打を放ちダイヤモンドを回る栗原。投手田中将(撮影・山崎安昭)
楽天対ソフトバンク 5回表、逆転の2点本塁打を放ちダイヤモンドを回る栗原。投手田中将(撮影・山崎安昭)