ソフトバンクがキャンプを張る宮崎アイビースタジアムのセンターポールには日の丸と球団旗だけが、たなびいていた。昨年まで誇らしげに4年間も掲げられていた「NIPPON CHAMPIONS」の旗はない。新生藤本ホークスは、この現実をどれだけ心に肥やしてこの日を迎えただろうか。

誰よりも煮えたぎるような思いでグラウンドに立っていたのは王球団会長ではなかったか。宮崎入りした前日(1月31日)の全体ミーティングでは12分超の訓示。自ら作成した資料を配布しての熱弁で改めてチームを鼓舞した。ホークスの王となった95年春は豪州ゴールドコーストでキャンプを張った。ナインを前にケネディ元米大統領の言葉を引用し「チームが何をやってくれるかではなく、チームのために何ができるか」と説いた。27年の月日が流れても王さんの情熱に衰えはない。屈辱は飛躍のためのバネなのだ。

メイン球場で打撃練習が始まった。待ちかねたように王会長はケージ裏に歩み寄って若手選手のスイングに目を凝らした。A組にはドラフト2位正木智也外野手(22=慶大)、同4位野村勇内野手(25=NTT西日本)が抜てきされた。「(正木は)僕は実戦的だなと感じました。(打撃の)体勢が崩れてもついていけるようなものを持っているね」と評し、バックスクリーンにアーチをかけた野村勇には「ものすごくパワフルだね」とうれしそうに何度もうなずいた。

世代交代を大きな課題とし「競争」をキーワードにした鍛錬の日々が始まった。王会長が選手に配布した資料にはこんな言葉もあったという。

「人生はブーメランだ。頑張りはいい形で帰ってくる。それを信じて苦しさを乗り越えよう。もう1人の自分に負けないように頑張れ。きっと良いことが帰ってくる」-。【ソフトバンク担当 佐竹英治】