普段とは違う記者席だったから見えたものがあった。17日の巨人-広島戦は宇都宮清原球場で開催された。地方球場ということに加え、コロナ禍もありバックネット下にある記者室は使えなかった。用意された記者席は球場一塁側ファウルゾーンのブルペンの奥。臨時のテントが張られた「ポール際」の記者室だった。

真横では巨人の中継ぎ陣が控える。グラウンドをはさんで正面には三塁側で広島の選手が肩をつくる様子が見えた。9回裏に登板したニック・ターリー投手(32)は7回表から肩をつくり始めた。巨人の高梨雄平投手(29)も登板しなかったものの7回から投球練習を始めていた。試合が進むにつれて慌ただしく準備するブルペンや、投手と打ち合わせする投手コーチなどから臨場感はひしひしと伝わった。

たった1イニングあるいはたった1人の登板になる中継ぎ投手もいるだろう。さらには高梨のように登板なく終える投手もいる。それでも来るべき対戦に備え、数十分前から準備を重ねていた。それがプロとして野球をすることなのだと、テント越しに感じた。

一方私は、午後10時に仕事を終え、タクシー乗り場に向かった。前には15人ほどが列をなしていた。予約? していない。待つこと45分でようやく乗れた。数時間前まで間近で“プロの準備”を見続けていたが、失念していた。5月にしては少し寒い宇都宮の夜空の下で、反省を重ねた。中継ぎ陣の徹底していた準備を振り返りながら。【広島担当 前山慎治】