今の西武の特徴を1つ挙げるとするならば、“距離感”があるかも知れない。ファンでない限り、少しイメージしづらいだろうが、辻発彦監督(63)と選手の壁が少ない。

最も分かりやすく示す光景がベルーナドームにある。それはツイッターなどでは「#辻監督と愉快な仲間たち」とも親しまれる。

今や1つの“見どころ”と言っていいかもしれない。試合前の選手紹介。最後にはベンチにいる監督も大型スクリーンに映し出される。その周りには決まって“ガヤ選手”が盛り上げている。主に山野辺、山田らムードメーカーの役割を担う選手が中心に、時にダンス的なパフォーマンスを見せたり、時にタオルやフリップを掲げたり。

リスペクトが根底にあった上で、“イジっている”ようにも。とにかく信頼関係がないと成立しない姿がある。

前半戦が終わる節目。辻監督にゆっくり腰を据えて、話を聞く機会を与えられた。「#辻監督と愉快な仲間たち」について、聞いてみた。

「なめているんですよ。あいつら」と笑ってから、こう続けた。「いやいや、根は明るいんですよ。僕は」と強調する。

たしかに、現役の時はどちらかと言うと、無表情で戦っていたという。グラウンドで笑うことはない。「現役の時はグラウンドで笑わないんだから。スタンドを見ないんだから。現役の時は(明るさを)隠していた」。

立場も時代も変化した。今、指揮官が心に秘める監督像も面白い。「選手たちがどう思ってるかは、分からないですけど」と前置きした上で言う。

「コーチに対しては○○さ~んって、(気軽に)言えても、やっぱり監督は特別じゃないですか。でも俺も監督が特別だなと思われたくない。コーチみたいな感じでいいかなと思っているんですよね。あいつら、来るやつは、来るものは拒まないです」

ちなみに、「#辻監督と愉快な仲間たち」に話を戻すと、“ネタ合わせ”の段階で、ダメ出しすることもあるという。

「こっちがダメ出しすることもあるから。それはないだろうって」と笑い「大変だと思うよ。あいつら」と“ネタ切れ”を心配する。

その言葉、表情は人間味と愛情に満ちあふれている。

28日のペイペイドームの全体練習でも然りだった。報道陣の前で辻監督は言った。話すのは「2分だけだぞ」。少しピリついたムード? も流れたが、さまざまな話題を振りまいてくれた。結局、取材が終わったのは…始まってから20分後の事だった。【西武担当 上田悠太】