喜多の時代が来た…のかもしれない。育成出身の喜多隆介捕手(24)が、7日のDeNA戦(東京ドーム)でうれしいプロ初安打&初打点を挙げた。一塁ベース上で笑みを浮かべ、ガッツポーズ。「すごくうれしいです。初ヒットのボールは両親にプレゼントします」と好青年らしさがコメントからあふれていた。

京都先端科学大から20年に育成ドラフト2位で入団。大学時代は野球部での練習のかたわら、アルバイトを経験した。コンビニの店員、ラーメン店、パチンコ店の清掃、派遣のアルバイト…。コンビニ時代は週4回の夜勤で、そのうち週2回は午後10時から午前6時まで働いた。眠い目をこすりながら、大学に行って学業と野球の練習に打ち込んだ。「どこにでもいる、ごくごく普通の大学生でした。今考えると、自分でもすごいなと思います」とにこやかに回想する。お金を稼ぐありがたみは身に染みて分かっている。

社会の中で培った「人間性」が魅力の1つだ。1年目を終えた契約更改。「入団した時から、自分が一番へたくそというか、自分が一番下という部分は思っている。支配下になってもそこは変わらずにやっていきたい」と謙虚な姿勢を強調した。油断も思い上がりも、余計なプライドもない。常に自らを冷静に分析し、成長するために猛練習を重ねてきた。

昨季、2軍監督を務めた阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチ(43)からの信頼も厚い。長年巨人を支えてきたレジェンドから捕手の「責任」の重さを教わった。「キャッチャーとして出ていく中でいろんな人の人生もかかっている。巨人軍としての責任が強いと感じます」と扇の要の意味をかみ砕く。責任を全うするためにも、早出練習やベンチでの声出し、ナインのサポートも献身的に行ってきた。

飛躍の2年目へ、準備は出来ていた。今春のキャンプ中、捕手のポジション争いへ向けて言った。「客観的に自分を見ても、他の捕手陣と比べて武器が『これ』というのはないと思う。細かいところをつめて、隙のない選手を目指してやっていきたい。信頼される捕手、マスクを喜多にかぶせれば、と思ってもらえる選手になりたい」。まだまだ成長途上の24歳。近い将来、扇の要としてチームを引っ張る喜多の姿を期待したい。【巨人担当=小早川宗一郎】