大阪・舞洲に選手たちが戻ってきた。オリックスの23年が始まった。

宮城や若月ら主力も年明けから姿を向け、始動。リーグ3連覇、2年連続日本一に向けた熱気がよみがえってきた。ただ、昨年の26年ぶり日本一をともに喜び合った顔ぶれは、様変わりしている。主力の吉田正がレッドソックスに移籍し、投手コーチを兼任していた能見篤史氏は引退して野球評論家に。同じ顔ぶれで臨めるシーズンなど本当にないのだな、と実感する。

スタッフでは、ベテラン通訳の藤田義隆さん(65)が勇退。近年では大物メジャーリーガー、アダム・ジョーンズとの名コンビで知られたが、近鉄時代から約40シーズンと長きにわたってバファローズを支えた名通訳だった。

藤田さんに世話になった取材で、大切にしている近鉄時代の思い出がある。ある月曜日。東京移動を前に、藤田通訳に頼んで当時の主力投手だったジェレミー・パウエルに話を聞いた。

取材者は担当記者3人。選手、通訳を含めて総勢5人の囲みで、心の中でおっと思うくらいスムーズに取材が進んだ。リズムを刻むメトロノームのように、だれかが質問を投げ、パウエルが答えると、違うだれかがそこから掘り下げる。質問者が偏らない。実際は時間にして、10分足らず。大きな話題を取り上げたわけではなく、次回登板への意気込みが中心だったが、いつまでも取材を続けていられそうな不思議な感覚の時間だった。

取材を終え、2人にあいさつしてその場を去ろうとすると、藤田さんが声をかけてきた。「今日はすごくいい時間だった、とJPが話しています」と伝えてくれた。「質問がわかりやすくて、答えやすくて、何が本当にいい時間だった、と」。なかなか聞くことのない感想を聞いて、はっとした。藤田さんがしっかりと両者をつないでくれたから、双方にとって気持ちのいい時間が生まれたのだと理解した。

日本人選手にストレートに聞いたならむっとされそうな質問を頼んでも、一呼吸おいて表現を考え、必ず相手に伝えてくれた。「その取材は無理」と言われたことは、1度もなかった。どんなときも誠実で、本当のプロの通訳だった。【堀まどか】