キャンプ地の宮崎入りするため羽田空港に向かう京急線のホームだった。分厚い大きな背中を丸めて、しゃがみ込んで、窮屈そうに靴紐を結んでいる男性がいた。どこか見覚えがあるフォルムだ。恐る恐る近づき、斜め後ろから横顔をのぞき込んだ。

やっぱり。11年前の2012年、私が巨人担当1年目時代の日刊スポーツの元巨人担当キャップで先輩の金子航だった。「おにぎりキャップ」の愛称で親しまれ最強中継ぎユニット“スコット鉄太朗”の名付けの親とも言われている。

当時はほぼ毎日、家族以上に時間を過ごした。記者としてのいろはを学び、キャンプ地や球場近くのご飯が、お酒がおいしい店をたくさん教えてもらった。特に思い出深いのは那覇の焼き肉「五割安」。今はなき名店でカルビ、ロース、ラムをつつきながら、金子キャップから「ここは白米がうまいんだ」と進められ、大盛りライスをほお張った。

あれから11年がたった。キャンプ前日のこの日、金子は羽田空港第3ターミナルで下車した。インドでのW杯を戦ったホッケー日本代表のサムライジャパンを出迎えにきたという。「なかなかなじみのない競技だけど、いろんなところで頑張っている人がいるからね。キャンプ取材、頑張れよ。しっかりとご飯を食べて、健康には気をつけて」と言われて別れた。

駆け出しだった当時の記憶がよみがえり、気が引き締まった。足を使え。初心忘るべからず。最後にもう1つだけ。金子キャップ、宮下、浜本の4人で担当した2012年は、巨人が日本一を奪回したシーズンだということも記しておきたい。【巨人担当=為田聡史】