いつになく笑顔でキャンプを過ごしている。あと1週間すれば42歳になるソフトバンク和田が第3クール最終日の14日、ブルペンで快調に投げ込んだ。「いい感じですね」。東浜、有原ら7人が同時に投げ、活気あふれるブルペンだったが、熱気を誘発していたのはチーム最年長の和田のように感じた。

「僕は1度死んだ身ですからね。今は2度目の生まれ変わりというか、そんな気持ちでいます」。和田はそう言って笑った。18年に左肩痛でシーズンを棒に振った。数え切れないほどの数の注射を左肩に打った。「もう投げられないかもしれない」。暗くうつむく1年から、治療と懸命なリハビリで復活した。だからこそ1年1年が勝負。「また痛くなったら、そこで終わり」。そう言って、和田はからりと笑った。苦しみを乗り越えたからこそ、投げる喜びをかみしめる。

開幕投手候補にも挙がるが、本人は「投げろと言われれば投げますけど、若い人がやればいいんじゃないですか」と遠慮気味。視線の先には東浜らの姿があった。過去4度開幕投手を務めた和田は「重さ」も承知している。「やっぱり143試合の1試合ではありません」と言う。とはいえ、先発投手の「本能」は忘れない。「今年は先発でしっかりと球数、イニングを投げていきたい。それが目標ですから。それができたら、来年の開幕なら投げたいですね」。来季なら元広島大野豊の42歳7カ月を抜き、開幕投手の球界最年長記録を更新する。

大記録にも挑んでもらいたいが、今季3・31のマウンドに立ってもらいたい。元オリックス佐藤義則の40歳6カ月を抜くパ・リーグ記録更新だ。「開幕で飛ばしすぎて、その後がダメだったらイヤですよ」。和田は大きく顔の前で手を振って、笑った。

【ソフトバンク担当 佐竹英治】