<オープン戦:ソフトバンク3-0広島>◇5日◇ペイペイドーム

最大のライバルである「ジョーカー」が侍に招集されると「モンスター」が復活の雄たけびを上げ始めた。右アキレス腱(けん)断裂の大けがから完全復活を目指すソフトバンク上林が猛打賞の活躍で開幕スタメン入りを猛アピールした。

1番センターで先発出場。いきなり初回の1打席目に広島先発九里の初球の直球を左中間にはじき返した。前日4日は7回の守備から出て9回に島内のチェンジアップに空振り三振。「昨日の配球から直球で来ると。当たりましたね」。3回に巡ってきた2打席目。技ありのバットコントロールを見せた。カウント2-1から内角低めへのカットボールをうまく拾い右翼二塁打とした。さらに今宮の左前打で二塁からヘッドスライディングで生還。右足の不安も一掃だ。「うまく変化球に対応できた。ファウルにならなかったのがよかった。(走塁は)難しい判断だったが、セーフになってよかった」。上林はニヒルに笑ったが、アピールは止まらない。5回の3打席目。ケムナの150キロの直球を左翼線へはじき返し2本目の二塁打を放った。

中堅の定位置を争う牧原大が侍ジャパンに招集された。開幕まで残り1カ月を切っただけに足踏みしているひまはない。「(牧原大が)いてもいなくても、やることは変わらない。自分が『よし』と思える打撃を常にしていきたい。1球、1打席で一喜一憂せず、自分の打撃に向き合って微調整しながら開幕を迎えたい」。かつてモンスターと呼ばれた男は完全復活に向け、しっかりと自分と向き合っている。

長いリハビリの間、過去に同じケガを負ったプレーヤーの復活ストーリーを調べ尽くした。ホークスOBで567本塁打を放ち、今年1月に亡くなった門田博光氏もその1人だ。だが、上林は長打力に力点を置いた大先輩とは違う道を選択した。「走って、守って、打てることを目指したい。イメージを覆したいと思っています」。静かな闘志を胸に秘めて、華やかに復活ロードを歩むつもりだ。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

ソフトバンク対広島 3回裏ソフトバンク1死二塁、上林は今宮の適時打で生還する(撮影・屋方直哉)
ソフトバンク対広島 3回裏ソフトバンク1死二塁、上林は今宮の適時打で生還する(撮影・屋方直哉)