再び、この選手の話を書こうと思う。6月26日に掲載された【プロ野球番記者コラム「【広島】立場が変わっても自分のままでいられる理由~」】で思考法を紹介した広島矢崎拓也投手(28)。6日阪神戦でまた、わが道を行く選択をした。
4点リードした本拠地マツダスタジアムの9回、「ピッチャー、矢崎」のコールの後に流れてきたのは矢沢永吉の「トラベリン・バス」だった。矢崎の登場曲と言えば、矢沢永吉でも「止まらないHa~Ha」だった。有名曲で、ファンの間でも浸透しつつあった。個人的には「ア~ハ!」の部分をスタンド全体で言う球場演出を期待していたのだが、何の前触れもなく変わった。
アスリートが何かを変えるときは、結果が出ていないときや流れが悪いときが多い。矢崎は昨季セットアッパーとなり、今季はストッパーと、“成りあがり”を体現。さらに今季はセーブシチュエーションでの失敗はなく、黒星もない。順調すぎるほどのシーズンを過ごす中で、変化を求めた。
そこには、矢崎だからこその深い理由があると勘ぐった記者の思いは空振り。理由は意外なほどに、シンプルだった。
「気分です」
矢崎はジンクスやゲン担ぎをあまりしない。負傷明けから今季初昇格したときも、ポジションへのこだわりや意気込みを語ろうとはせず「流れに身を任せるだけです」と言っていた。自分を高めることに注力しても、何かにすがることはしない。
「なんか(前登場曲は)有名過ぎて、ミーハーかなって。でもあの曲もアンコールで歌われるような曲ですし、好きな曲なんですよ」
そう思ったときが、変え時と判断したのかもしれない。楽曲が変わっても、ライブで感じた「YAZAWA」のパワーを感じつつ、この日も任された9回を無失点で締めた。一般人の感覚だけでなく、アスリートの感覚の枠にも収まらない、「YASAKI」もロックだ。【広島担当 前原淳】




