シーズンが終われば、プロ野球選手は残した数字で語られる。シビアな世界ではある。ただ、貢献度は数字だけでは表せない。今季勝ちパターンとして好成績を残した矢崎、島内は口をそろえて「ザキさんの存在が大きかった」と言う。3連覇時は抑えを務め、通算427試合登板の中崎翔太投手(31)は、若い中継ぎ陣の精神的支柱だった。


中崎は今季、開幕2軍も、5月16日に昇格すると、最後まで1軍に同行した。勝ちパターンを支える中継ぎとして、僅差の劣勢の展開での登板を中心に35試合で1勝0敗、7ホールド、防御率2・73。1投球回あたり何人の走者を出したかを表すWHIPは0・94を残した。0点台はチームが連覇した17年以来の好成績だった。ただ、数字に表れない貢献に、苦しいシーズンとなった栗林も感謝を口にする。


「1、2年目はブルペンの中がずっと緊張していたんですけど、ザキさんがいることでオンとオフがしっかりできていたなと思います。中継ぎみんなでご飯に行くのもザキさんがやってくれたりするので、やりやすい雰囲気ができていた」

中継ぎにとって、登板に向けて控えるブルペンはマウンドよりも長く過ごす職場でもある。職場の空気づくりはどの世界も年長者の影響が色濃い。中継ぎは毎日登板に備え、出番がなくても肩をつくることも珍しくない。心身ともに過酷なポジションだからこそ、中崎は率先してブルペンの雰囲気づくりに努めたという。

「僕より年上の選手が(ブルペンに)いなくなって、今の若い選手はグッと(自分の世界に)入る選手が多かった。決して悪いことではないけど、1回から9回まで何もしゃべらずにいると、本当お通夜みたいになるんですよ。それだけは避けたいと思って、今年ブルペンに入ったら、そういうところはやっていこうかなと思っていた」

マウンドでは鉄仮面を被り、普段はおとなしいイメージもある。だが、ブルペンでは後輩をいじったり、笑わせたりと明るく振る舞った。もちろんピリッとさせるところはさせる。今季はそこに、結果も伴った。有形無形の貢献。5年ぶりAクラス入りを支えた広島中継ぎ陣の団結力は、救援防御率3・14だけでは語れない。【広島担当=前原淳】

広島中崎翔太(2023年11月撮影)
広島中崎翔太(2023年11月撮影)