補強期限が迫る。例年にない混戦のセ・リーグ。戦力補強を行う球団もある中、広島に新戦力獲得の一報は届かない。そこには、新井貴浩監督(47)の強い意思にある。
広島は今季、開幕早々に2人の新外国人野手が負傷離脱するアクシデントに見舞われた。中継ぎ投手のハーンも出遅れた。昨秋ドラフトで獲得した新人選手も1軍出場したのは、交流戦で初昇格した育成2位の佐藤のみ。ほぼ昨季と変わらない顔ぶれで戦っている状況だ。それだけに球団は、新外国人の調査、そして獲得は責務と捉えていた。シーズン序盤から監督に何度か新外国人選手獲得の相談をしても返ってくる答えはいつも同じ。
「獲得しなくていいです」
戦力的に見れば、長打力のある外国人選手は喉から手が出るほど欲しいはずだ。ヘルナンデス加入によって打線が上向いた巨人を見れば、前言撤回しても不思議ではない。だが、新井監督は今年だけではなく、中長期的視点でチームを見ている。「若手育成」から目を背けない、強い覚悟が感じられる。
開幕早々に外国人2選手が離脱したことも、1軍登録枠が2つ空いたことで昨季よりも若手に多くの出場機会を与えられる環境になったとプラスに捉えた。宇草や中村健、石原らが出場機会を得て、矢野や二俣が台頭した。
だが、本格的な夏を前に攻撃陣がそろって調子を落とし、チームも4連敗。7月9日に1カ月守ってきた首位から陥落した。新井監督はシャイナーを3カ月半ぶりに1軍に昇格させた。ウエスタン・リーグ34試合で打率1割7分1厘、2本塁打、7打点の成績は正直、再昇格に値する数字ではないようにも感じる。新井監督も「ファームからの推薦はなかったけど」と認めながら「外国人選手というのは、場所が変わって気持ちが上がってくることもある。いいパフォーマンスを見せてくれることに期待したい」と続けた。シーズン終盤には今季の最終形をつくらなければいけないと考えれば、くすぶる外国人に与えられる昇格の機は今しかなかったとも言える。
今季、チームが直面した最初の正念場に、新井監督の明るさは変わらない。強がりではない。「そんなにトントンとうまくいくとははなから思っていないので、まったく気にしていません」。7月戦線で現有戦力の誰が台頭するのか-。新井監督は、順位争いが本格化する8月以降を見据えながら、今を戦っている。【広島担当 前原淳】




