2年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた阪神には「神ドラフト」と呼ばれる世代がいる。20年ドラフトで指名された、育成も含めて9選手。優勝の瞬間、実に7人が1軍登録され戦力となっていた。

嶌村聡球団本部長(57)はしみじみと回顧する。「くじに当たったのがとにかく大きくて、その後もスムーズに進んだ」。この年の1位は4球団競合の末、ドラフトの目玉だった佐藤輝明内野手(26)を見事に引き当てた。「(当時の)矢野監督が引いてくれて、あの時はうれしかった。うちは4球団の時は強いんですよ、(現DeNA)藤浪の時もそうだし」。ここから「神ドラフト」は始まった。

「ドラフトは経年で考えている」。前年の19年は1~5位まで高卒選手を指名し、20年は大学、社会人を中心に指名する戦略だった。「長距離打者というのは少ないし、地元の選手だし、交渉権が取れたことで、次に投手という形で」。2位で伊藤将司投手(29)、3位で佐藤蓮投手(27)、5位で村上頌樹投手(27)と次々に指名した。

村上は今季、優勝までに11勝を挙げ、伊藤将も4勝と貢献した。「これだけこの年のドラフトで、1軍選手が出てくるとは正直思わなかった。これは順位付けをスカウトがしっかりしてくれたからこそだと思う」。スカウト陣の分析と目利きには胸を張る。

そして大事になるのが、中位から下位でどんな選手を指名するか。「4、5、6位のとり方は、編成上意味のあるとり方が大事」。6位で指名した中野拓夢内野手(29)は、二遊間の即戦力を求める方針のもと獲得。「やっぱり足が速い、守備力がある。セカンドショートは守備力がなかいと。6位という順位でよく取れた」。

支配下では12球団ラスト、8位で唯一の独立リーグ出身選手、石井大智投手(28)を指名。「とると育てるが連動しないと選手は出てこない。下位に行けば行くほど、特徴が出ないととは思っていた。石井は矢野監督から『角度があるボールでこれはいい』と、8位で指名しました」。原石を見つける眼力は確かだった。

そして、藤川球児監督(45)が初めて迎えた24年ドラフトは、阪神の長所である投手のさらなる強化に重点を置いた。このオフに獲得した新外国人も、5人中4人が投手。「合致する中で進めさせていただいたのが、今の状況につながってるんじゃないか」と分析した。

「神ドラフト」は1年だけの結果ではない。一貫した方針を続けてきたからこそ生まれたものだ。嶌村本部長は、今後の目標についても触れた。「育成した選手で勝つということが、1つの方向になってくると思います。それは外国人にしてもそうです。支配下でとった選手も育成なんですよ」。育成力が作った「神ドラフト」かもしれない。【阪神担当=磯綾乃】

近大マグロの前でポーズを取る阪神ドラフト1位近大の佐藤輝明(2020年10月26日撮影)
近大マグロの前でポーズを取る阪神ドラフト1位近大の佐藤輝明(2020年10月26日撮影)