U18ワールドカップ(W杯)を制したのは台湾だった。アジアでは日韓としのぎを削る強豪。強さの秘密を探ってみた。

野球U18W杯で米国を破って優勝を決めて喜ぶ台湾ナイン
野球U18W杯で米国を破って優勝を決めて喜ぶ台湾ナイン

9月8日の決勝戦。1-0の6回2死から米国ハッセルが放った左翼後方への打球に、台湾のロ・ウィーチェが飛び込んだ。相手も拍手を送るスーパープレー。試合後、米国レゲット監督は「台湾は守備が素晴らしかった」と堅守が優勝の要因だと語った。優勝の瞬間の喜びようは爆発的。喜怒哀楽を出さないチョウ・ツンチ監督も「すごくうれしいです」とうなずいた。

この大会にかけていた。2カ月半も前に代表を招集し合宿を重ねてきた。国士舘大大学院に在籍し、台湾選手の留学を手助けしている頼柏宇さんは「台湾が強かったのはキャンプ期間を長く取ってあったから。指導陣と選手の間のギャップをなくす目的があったのでは」と分析してくれた。

重圧に耐えうるメンタルを構築した。スポーツ心理学を専攻したコーチがスタッフに入り、合宿中から指導。大舞台で好プレーが連発した要因といえそうだ。失策数は台湾8、日本9と大差ないが、国際大会でいかに本来の力を出せるかが、大きな差になる。

台湾の高校野球は木製バットがメイン。学生野球連盟が主催する大きな大会は木製、金属の2種類あるが、注目度が高いのは木製大会。木製を扱える精鋭ばかりの台湾打線が上位、下位問わず鋭い打球を飛ばせるのもうなずける。

頼さんの意見は一面的ではない。「確かに、野手が次のレベルに進むためには高校から木製を使った方がいい。でも、投手育成の面ではいい影響がないと思います。台湾の大会を見ると、投手はいい直球を持っていれば基本的に抑えられます。そういう状況だと、変化球の精度を高めようとする選手は少なくなる」と指摘した。力の弱い高校世代で木製バットを使えば投手有利となり、投手の技術向上の妨げになりかねない。

もう1つ聞きたかった。頭髪だ。台湾は丸刈り。韓国も丸刈りかそれに近い短髪。頼さんの答えが興味深い。「台湾の野球部は小学校から高校まで全員丸刈りと決められています。日本のように、丸刈りがいやだから野球をやめたというのは少ないですね」。

女性の韓国人テレビ関係者に聞くと、韓国では日本のように数年前から空気が変わってきた。いずれ兵役で丸刈りを強制される反動からか、球児の「丸刈り論議」もあるそう。また中高生の女子生徒の髪は、肩まで“お下げ”が当然だったが、近年は自由化が進み染髪にも寛容になってきたそう。「いい時代になったよ~」と笑っていた。

ちなみにニカラグアやパナマの選手はイメージ通りにド派手。野球をやる上で髪形などささいな問題と決めつけていたが(モヒカンに帽子はかぶりにくそうだったが)、絶対丸刈り派の台湾事情を知ると、関連性にも興味が湧いてくる。(つづく)【柏原誠】