ロボット審判は、投手よりも打者の間で特に評判が悪い。

人間による判定とは明らかにゾーンが異なり、アジャストに苦労する。ニュージャージー州に本拠地を置くペイトリオッツのエドウィン・エスピナール内野手(25)は「適応が非常に難しい。打者殺しだね。ゾーンが安定していないし、来た球すべて振らなければならないくらいだ」と不満顔だった。

同チームには17年にロッテでプレーしたジミー・パラデス外野手(30)がおり、話を聞いてみると「外角低めのコーナーはいいが、それ以外の際どいところはすべてキツい。リーグ全体の打率が大きく下がっている」という。打者の感覚では低めが相当低く、人によっては適応が非常に困難だ。

ロボット審判と並んで評判が悪いのは、一塁盗塁だった。アトランティックリーグが一塁盗塁ルールを開始したのは7月13日のこと。その日、ブルークラブスのトニー・トーマスが史上初めて一塁盗塁をした選手として米国で大きなニュースとなったが、それからどれだけの一塁盗塁が行われたのか。取材してみるとルール導入初日以外は、ほとんど行われていない。

パラデスは「僕もルール導入初日に一塁を盗塁したよ。イージーだった。捕手が後逸したときに走ればいいだけだからね」と話す一方「もうやらない。誰もやらないね。あれは野球じゃない。子どもの試合のようになる。MLBで導入すべきではない」と主張した。ペイトリオッツのグレン・バーカー打撃兼三塁コーチ(48)に話を聞くと「たぶん選手は、俺たちは打者なのだから、まず打つべきと思っているのでは。野球の本来の姿とは違う」と分析してくれた。暴投やパスボールで一塁を盗めば打者にとっては得になるが、プロとしてのプライドが許さないということだ。

一方、評判のいい新ルールもある。スリーバント失敗後にもう1ストライクのチャンスが得られることは打者にとって歓迎であり、塁のサイズを大きくしたことも評判がいい。

大きくなったベースで守備に就くペイトリオッツのエドウィン・エスピナール内野手(撮影・水次祥子)
大きくなったベースで守備に就くペイトリオッツのエドウィン・エスピナール内野手(撮影・水次祥子)

前出のバーカー・コーチは「大きい塁は選手の安全性向上に大いに役立っている。走者が塁に駆け込むときに、内野手の足を踏むようなことが起こらなくなる」と話す。ただし塁のサイズ拡大については、MLBは走者が駆け抜けやすくなりセーフになる確率を上げるだろうと見込んでいたそうで、それに関してはあまり影響が出ていないという。(つづく)【水次祥子】