<センバツ高校野球:天理10-3仙台育英>◇29日◇準々決勝

特別なセンバツで東北勢初優勝を目指した仙台育英の挑戦が、終わった。天理との準々決勝。3-10で力負けした。須江航監督(37)は「このスコアに、すべての意味がある。実力がなかった以外の答えはないです」と振り返った。

仙台育英対天理 4回裏、天理に4点を奪われベンチに戻ったナインに声を掛ける仙台育英・須江監督(撮影・前田充)
仙台育英対天理 4回裏、天理に4点を奪われベンチに戻ったナインに声を掛ける仙台育英・須江監督(撮影・前田充)

2年ぶりの球児の春は、島貫丞(じょう)主将(3年)の選手宣誓で幕を開けた。東日本大震災から10年。被災地からの宣誓には大きな注目が集まった。島貫主将は重圧も感じていたが、3分12秒の宣誓文に思いを込めた。「選手宣誓は本当にかけがえのない思い出になった。この先の10年、これからも思いは継続されてセンバツは続く。出場するチームは思いをくんで、プレーしてほしい」と未来の球児にエールを送った。

試合を重ねるごとに、日本一への期待は大きくなっていた。初戦の明徳義塾(高知)戦は1安打完封リレー。2回戦は神戸国際大付(兵庫)に14安打13得点。さらに初戦が大会第1日。試合間の日程を確保でき、他校より優位だった。以前、須江監督は「日本一をつかむためには、組み合わせの日程が重要になってくる」と話していた。今大会は理想的だった。

4強進出は逃したが、手応えと課題が見つかった。須江監督は「優勝に1つ1つ、近づいている気がする。それでもこの敗戦の理由を『打ってなかったから』とか、簡単に結論を出してはいけない。もう少し、深いところにあると思う。この負けが『夏の成果を生んだんだ』と言えるようにしたい」、島貫主将は「東北の方々からたくさん応援していただいた。その中で、結果を残せなくて悔しい。この経験を夏につなげる」と雪辱に燃える。

100年を超える高校野球の歴史の中で、東北勢は優勝していない。指揮官は「チーム内競争で日本一になった時に、高校野球の歴史が変わる」と言い続ける。1つの大会が終われば、メンバーを白紙に戻す。練習試合、紅白戦など、誰にでも平等にチャンスを与える。勝ち抜いた選手が、背番号を手にする。今大会では4選手が、昨秋ベンチ外からメンバー入り。「選手の可能性を信じて、勝ち取った選手で夏挑みたいと思います」。4月には新入生が入ってくる。3学年による選考レースが始まる。

集大成となる夏で、大旗の白河越えを実現させる。「このチームはまだ終わっていない。夏がある。今は選手の気持ちを聞きたい。充実感、達成感があるのか、それとも、悔しい気持ちでいっぱいなのか。チームが求めていることを見極めて、チームで1つになって進んでいきたい」。仙台育英ナインが再出発する。【佐藤究】