開幕から1カ月が経過し、チーム状況がある程度見えつつある。セ・リーグでは古巣であり、かつてはコーチと選手の立場で切磋琢磨(せっさたくま)した三浦大輔監督が率いるDeNAが苦しんでいる。以前、「放浪編」の中でDeNAが不気味な存在だと書いた。新監督を迎え、チームが若いだけに走りだすと止まらないケースがあると思ったが、今のところは正反対の結果が出ている。

力強く握手する元大洋(現DeNA)の選手だった小谷正勝氏(左)とDeNA三浦大輔監督(2020年12月撮影)
力強く握手する元大洋(現DeNA)の選手だった小谷正勝氏(左)とDeNA三浦大輔監督(2020年12月撮影)

かつて、ヤクルトなどを率いられた野村克也監督が「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言われた。DeNAの現状にピタリと当てはまる言葉だろう。負ける要素はたくさんあるが、投手陣に目を向ければ、ボール球先行で勝負が後手後手になっている印象を受ける。何と言っても、無意味な四球が多すぎる。

なぜ、このような状態に陥ったのか。捕手の配球なのか、投手が打たれることを怖がりすぎているのかはわからないが、投手はマイナス思考になってしまうとストライクは投げられない。コースを狙うのは大前提として、力で押すタイプの投手なのか、制球力で勝負する投手なのか、各投手の特徴はあるが、早く追い込むことはピッチングの鉄則である。

打たれるのは嫌だろうが、打たせることはアウトを取る1つの方法だ。打者は追い込まれるとボール球でも振ってくるケースがある。慎重になって、狙いすぎる気持ちもわかるが、無い物ねだりをしすぎていないだろうか。裃(かみしも)を着て、野球をしているように見える。浴衣姿で盆踊りに行くような気持ちで臨めば気楽になる。

DeNA山崎康晃(2021年4月20日撮影)
DeNA山崎康晃(2021年4月20日撮影)

シーズンの巻き返しに向け、山崎康晃の復調は明るい材料だろう。昨年と比べ、今年は球の力が出てきている。メカニック的に言えば、左足が着地して投げに行く時に膝のひねりが出て、躍動感が出ている。コントロールに主体を置くのか、ヘッドの走りが悪い時もあるが、いい球が出てきているので、思い切り投げ込んでいけばいい。

将来性豊かな投手も何人か目に留まった。先発では阪口皓亮は強い真っすぐを投げるし、左腕の坂本裕哉は攻めることを知っていて、現状では少ない球数であれば、思うところにボールを投げられる。リリーフでは桜井周斗で、楽天の松井裕樹のようなスライダーを投げる。3人とも素材が良く、磨いていけばもっと良くなる。

昨年12月、三浦監督と対談した時に「焦らないことだ」とエールを送った。覚悟が決まっていたのだろう。「はい」と力強い返答だった。開幕から負けが増え、苦しいだろうが、テレビで見る限りは落ち込むような姿は見せず、堂々としているように映る。現役時代から課題に向き合いながら、黙々と練習する選手だった。自分の中に信念があるのだろう。ぶれずに突き進めばいい。(つづく)

小谷正勝氏(19年1月撮影)
小谷正勝氏(19年1月撮影)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。