東京オリンピックの侍ジャパン24選手が持つ武器、ストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。ルーキーで唯一選出された広島守護神の栗林良吏投手(24)が、プロ野球新人記録となるデビューから22試合連続無失点の偉業を支えた驚異の「奪三振力」で世界の打者をぶった切る。

フォークの握りを見せる広島栗林
フォークの握りを見せる広島栗林

 

栗林は、何もかもが新人離れしている。ルーキーながら開幕戦から守護神に抜てきされると、3月27日の中日戦でプロ初登板初セーブをマーク。無失点投球を重ね、19年にソフトバンク甲斐野が記録した2リーグ制後の新人記録となるデビューから13試合連続無失点をあっさり塗り替え、「22」まで記録を伸ばした。6月29日現在で28試合に登板し、防御率は0・65。文句なしの成績で、新人で唯一代表に名を連ねた。

中継ぎに求められる能力の1つである「奪三振力」が突出している。最速154キロの直球と、フォーク、カットボール、カーブを武器に、28試合で27回2/3を投げ、積み重ねた三振数は「43」。奪三振率では、20試合以上登板した選手に限れば、12球団トップの「13・99」を誇る。ソフトバンクのモイネロを上回り、侍ジャパンに選出されたリリーバーの中でも群を抜いた数字をたたき出している。

抜群の「奪三振力」を支えるのが、栗林の代名詞になりつつあるフォークだ。直球と同じフォーム、腕の振りから繰り出される伝家の宝刀で、各球団の強打者をねじ伏せてきた。名城大時代のコーチで、恩師と慕う元中日の山内壮馬氏から握りを教わり、トヨタ自動車で磨きをかけた。広島入団後は、フォークを武器に球団最多165セーブを記録した永川投手コーチから、リリース時の意識や、落としどころの狙いなどを伝授され、結果につなげた。

勝負強さも光る。5月8日の中日戦。栗林は1点リードの8回1死満塁の大ピンチでマウンドに上がった。「1点も取られちゃいけない場面だった。内野ゴロか、三振も選択肢にあった中で、フォークをチョイスしました」。代打井領に対し4球連続フォークで投ゴロ併殺に封じ、9回も無失点で窮地を脱した。もともとアドレナリンが「すごく出るタイプ」といい、社会人時代に確立された1球入魂のスタイルで、幾度とチームを救ってきた。

プロ23試合目の13日オリックス戦でプロ初失点を記録し、プロ初黒星を喫した。ただ、失点明け初登板となった2日後の15日西武戦では見事に3者連続三振。侍ジャパン稲葉監督は「切り替えもすごく上手な選手なのかなと感じた。彼には後ろの方、どこでも任せたいと思う」と信頼を寄せる。

卓越した「奪三振力」をはじめ、投球術、マウンド度胸を併せ持つ黄金ルーキー。世界の強豪国が相手でも一泡吹かせ、三振を量産していくに違いない。【古財稜明】