各球団で新人合同自主トレーニングが始まった。いよいよプロ野球人生がはじまる。不慣れな部分もある中、それぞれの所属球団で、緊張のプロ初練習に取り組む。田村藤夫氏(62)が西武、巨人、ヤクルト、日本ハムの新人選手の動きをチェックし、現時点での力量をリポートする。初回は西武。

 ◇  ◇  ◇

ドラフト1位隅田知一郎(ちひろ)投手(22=西日本工大)のきれいな投げ方が目についた。まず、左右のブレが少ない。これは左右のバランスがいいことが起因しており、しっかりしたステップで体重移動し、さらにリリースポイントが安定しているため、体の開きが少ない。しっかりボールに指がかかっており、きれいな回転で、十分なスピン量のあるストレートという印象を受けた。

キャッチボールという段階だが、左右のブレが少ないのはとても大切だ。先述した要素が安定していないと、ボールに指がひっかかりコントロールが安定しないばかりか、体が開きボールがシュート回転してしまう。隅田は受ける捕手のほぼ構えたところに制球できていた。

上下のブレはあったが、これはリリースが早いか遅いかによるため修正が比較的簡単だ。上下、左右ともにブレが少ないことが理想だが、上下のブレを差し引いても左右のブレの少なさは光る。肘も柔らかく、しっかりボールを前で離している。

初見での印象ということになるが、コントロールは良さそうなイメージだ。ストレートの質も良く、右打者の内角にシュート回転せずにしっかり制球できそうだ。今後の仕上がり次第だが、左打者の内角も厳しく攻めることが期待できる。

最近の投手で言えば、楽天の早川が近いと感じる。ストレートの質の良さを見る限りでは空振りも取れそうだ。変化球はこの日のキャッチボールではカーブとチェンジアップ。カーブはブレーキのかかるカーブではなく、スピードの乗った変化という感じだ。一方、チェンジアップはよくボールが抜けており、このチェンジアップとストレートで緩急をつければ、打者を苦しめそうだ。

動きはじめたばかりの新人だけに、これからプロの練習についていくことで精いっぱいになるだろう。体の負担も出てくる。仮に順調に行けばと考えれば、隅田はある程度の制球が望めて、空振りも取れる左腕として期待が持てる。

ドラフト2位の佐藤隼輔投手(22=筑波大)は、隅田と比べると左右のブレが気になった。キャッチボールでは捕手に「肘が低いですか?」と質問しながらフォームを気にする姿勢に、好感が持てた。環境が変わり、多くの目が注がれる中で、勝手も違うだろう。気負いからフォームを崩す新人選手も多く見てきただけに、謙虚に、冷静に自分をチェックする佐藤には、しっかり着実にコンディションを整えていってほしいと感じた。(日刊スポーツ評論家)

9日、新人合同自主トレでキャッチボールをする西武佐藤
9日、新人合同自主トレでキャッチボールをする西武佐藤