WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

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3大会ぶりの世界一奪回へ、二刀流のエンゼルス大谷翔平投手(28)が本番へ向けて着々と準備を進めている。投打のキーマンとして、15年のプレミア12以来、8年ぶりに国際大会に参戦。今年1月の記者会見では「優勝だけを目指して、勝つことだけ考えていきたい。前回は出られなかったので、楽しみにしながら頑張りたい」と意欲を示した。

投手では160キロ前後の速球、変化量とスピードを自在に操れるスライダー、持ち球の中で最も被打率が低いスプリットを武器とし、打者では本塁打を量産できる長打力とスピードがメジャートップクラス。投打の技術の高さはもちろん、出場登録選手数の枠が決められている中で投手と野手の役割を1人が担えるのも、侍ジャパンにしかない大きなアドバンテージとなる。さらに、先発投手が降板後もDHで出場できる「大谷ルール」も適用され、二刀流の強みを生かせる。

15年11月、プレミア12準決勝の韓国戦で力投する大谷
15年11月、プレミア12準決勝の韓国戦で力投する大谷

何より、大谷自身の気持ちの強さが侍ジャパンには追い風になっている。大舞台となればなるほど、アドレナリンが出て集中力が増すタイプ。過去に日本代表として臨んだ試合でも本領を発揮しており、14年の日米野球は2試合の登板で0勝1敗、5回7奪三振、2失点(自責点0)。15年のプレミア12は2試合で1勝0敗、13回を無失点で21奪三振をマークし、先発投手のベストナインに選ばれた。投手通算5試合(強化試合1試合含む)でいまだ自責点は0だ。また、打者では16年の強化試合4試合で通算11打数5安打(打率4割5分5厘)で1本塁打と好成績を挙げている。

16年11月、オランダとの強化試合で二塁打を放つ大谷
16年11月、オランダとの強化試合で二塁打を放つ大谷

メジャーでも度々、大舞台に強い大谷を見せてきた。昨シーズン終盤の8月末、ヤンキースの主砲ジャッジとのMVP争いが注目された3連戦では、2本塁打と期待に応えた。「敵味方関係なく、お客さんが入るというのは、やりがいを感じる」。コロナ禍で無観客だった20年シーズンは、故障もあったが、投打で結果が出なかった。それでも、有観客となった一昨年から完全復活。「結果が出る、出ないにかかわらず来てくださるファンの人もいるし、そういうファンの人が喜んでいる姿を見たいのが一番」。スタジアムを埋め尽くす大観衆の声援が、二刀流の原動力でもある。

大谷の主な国際大会成績
大谷の主な国際大会成績

最高峰のリーグで5年間、戦ってきた経験がある大谷は、今回のWBCで初めて世界を相手に戦う侍メンバーにとっても頼もしい存在。チーム戦略や精神面でも求心力がある。米国代表をはじめ、各国が最強メンバーをそろえる今大会。アドレナリン全開の二刀流が、先陣を切って立ち向かう。【斎藤庸裕】