WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

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DeNA今永昇太投手(29)は、時に「投げる哲学者」と形容される。確かに感覚的に縫い目やヤマの高さなどが異なるWBC使用球対策として、各ボールの特徴ごとに練習する球種を変えたり、体の回復に大事と聞いたミトコンドリアの増殖に取り組むなど、独自の世界観を披露。国際試合でも武器の1つとなるが、チーム愛こそが世界を斬る「宝刀」となる。

19年11月、プレミア12メキシコ戦で力投する今永
19年11月、プレミア12メキシコ戦で力投する今永

「代表に関しては、どの招集でも僕は意気に感じていて、約1000人弱の現役プレーヤーがいる中で、ものすごく価値は高いですし、誰しもが望んでもできないことなので、入りたい、そういう気持ちです」

日の丸への思いを聞かれ、真っすぐな言葉で表現した。その強い思いが表れたのは、昨年12月24日に侍ジャパン栗山監督から電話で代表入りを伝えられた時だった。「不思議だなと思ったのが、あれだけ入りたいと言った日本代表に入って、うれしいはずなんですけど、少しだけ責任感と重圧と恐怖心を感じた」。異常な感覚に襲われるほど、尊く、特別なものだった。

昨年は日本ハム戦でノーヒット・ノーランを達成し、チームトップタイの11勝を挙げたDeNAのエース左腕。侍ジャパン通算では7試合に登板し、26イニングで48奪三振、防御率0・35と無類の安定感を誇っても、余計なプライドは捨て、会話の中で栗山監督に「どんな状況でも、必ず自分の力を発揮します」と先発でも中継ぎでも全うする覚悟を示した。

チームのために何ができるか、どうすべきかを追求する。今回、2軍キャンプを三浦監督に志願したのは「1軍キャンプは僕の調整で使うところではなく、競い合う場所。そういうところでもチームの士気を下げたくなかった」ことが理由。侍ジャパンでは「周りにすごい選手がいるので俺が俺がというより、助けてもらいながら」と冷静な心で結果へと結び付ける。

並々ならぬチーム愛が空回りしないように、「鈍感力」も大事にする。19年のプレミア12など、過去の経験を踏まえながら「あまり気にしないことが一番大事だなと。キャッチボールの時間が取れないとか、普段のケアができなかったり、予測できないことがたくさん起きるんですけど、いろんなことを経験して鈍感力が身に付いたかなと」。

大リーグからはパドレスのダルビッシュ、エンゼルス大谷が参戦するなど、強固な投手陣で迎える今大会。「ショウタ・イマナガ」の“奪三振ショータイム”が世界を驚かせる瞬間が訪れる。【久保賢吾】

今永の主な国際大会成績
今永の主な国際大会成績