大谷、ベッツ、フリーマンといったスター選手ほど知名度はない。だが昨季はベッツに次ぐチーム2位の36本塁打を放つなどドジャース屈指のパワーを誇るのがマックス・マンシー内野手(33)だ。大事な場面で貴重な一打を放ち、打線に欠かせない存在だ。

打席に立つマンシー(USA TODAY)
打席に立つマンシー(USA TODAY)

だがそんな強打者も、かつては戦力外となり現役として正念場を迎えた時期があった。アスレチックスに所属していた17年1月、まだメジャー3年目に入ろうとしていたばかりの時期だったが、40人枠から外されマイナーに降格されると、開幕日だった4月3日に契約を解除された。

26歳で早くも見限られたマンシーを拾い、ブレークさせたのがドジャースだった。契約解除から3週間後にマイナー契約で移籍すると、翌18年開幕直後の4月17日に昇格し、たちまち頭角を現した。

変身した理由は、球団傘下3Aオクラホマシティーでプレーする間、徹底的に打撃スイングの改良に取り組んだため。大振りをやめてコンパクトに、確実に球を捉えるように変え、選球眼も磨いた。その結果、再昇格1年目にいきなり35本塁打を放つと、19年にも35本塁打と98打点をマーク。21年と昨季は自己最多の36本塁打を記録した。アスレチックス時代に思うような打撃ができなかったときは自信を喪失し、野球をやめようと考えたこともあったという。それでも「17年に所属する球団がないまま開幕を迎えたとき、家でポツンと座っていて改めて思った。自分はどれだけ野球が好きかということを」ともう1度自分を奮い立たせた。

どん底の経験があるためか、スラッガーとしてトップクラスの成績を挙げ続けながらもエゴを出すことなく、常にチームの勝利を最優先に考える選手になった。「このチームは、チームファーストで自分の成績は二の次に考える選手ばかり」と今のチームに満足しているという。そんなマンシーが、昨年11月のポッドキャストで「彼とぜひ同僚になりたい。チームに彼がいたら、クールだよ」と熱望していたのが大谷だった。

自身も昨季後に、契約を2年延長。評価額よりも格安の金額で残留を決めており「妻も子供たちもLAの生活に慣れ、ここが気に入っている。僕ら家族にとって、LAにい続けることが何よりも重要だった」と話していた。今季はドジャースで8年目、メジャーでは9年目。昨季に引き続き、攻撃の要の1人として活躍が期待される。【水次祥子】

マンシーの23年シーズンスタッツ
マンシーの23年シーズンスタッツ

◆バレル% 打球の初速が98マイル(約157・7キロ)以上、打球角度26~30度で打球を放った時を基準(速度が上がれば角度も広がる)とした指標で、統計によると打率5割以上、長打率1・500以上になる確率が高い。このバレルで打つ確率を%で表したのがバレル%。

◆スプリントスピード 1秒に何フィート移動したかを表す走力。2つの進塁時などに採用される。タイムはシーズン上位2/3を平均。

マンシーの年度別メジャー成績
マンシーの年度別メジャー成績

◆マックス・マンシー 1990年8月25日、米テキサス州生まれ。12年ドラフト5巡目(全体169位)でアスレチックスに入団し15年にメジャーデビュー。この6年で35本塁打以上を4度記録し球宴に2度選出。20年ワールドシリーズでは打率3割1分8厘と活躍。昨季は自己ベストの105打点。昨年11月に2年総額2400万ドル(約36億円)で契約延長。今季年俸は700万ドル(約10億5000万円)。183センチ、97キロ。右投げ左打ち。