甲子園出場校を決める地方大会が7月31日、終了した。甲子園に出られなかったチームの中から印象に残った選手を紹介したい。

盛岡中央・斎藤(7月16日撮影・山田愛斗)
盛岡中央・斎藤(7月16日撮影・山田愛斗)

まずは右投手から。

ネット中継で見た盛岡中央(岩手)斎藤響介投手(3年)のストレートに魅力を感じた。177センチ、68キロとけっして大柄ではない。それでもコンスタントに140キロ台後半のスピードをマーク。今大会では152キロを投げ自己最速を更新した。糸を引くような快速球。スライダー、カットボールなどの変化球も制球できており、想像よりもはるかに完成された素晴らしい投手だった。

準決勝で大本命の花巻東を破って決勝進出。残念ながら一関学院に敗れ甲子園には届かなかった。U18日本代表に選ばれてもおかしくない実力。プロか進学か、まだ進路は決まっていないようだが、今後の活躍が非常に楽しみだ。

左腕では浦和麗明(埼玉)吉川悠斗投手(3年)にびっくり。春先から話題になっていた投手。なかなか見る機会がなかったが2回戦の秩父農工科戦をネット中継で見ることができた。

なんと1回、先頭打者から9者連続三振。185センチ、77キロの細身のサウスポー。下半身と上半身がタイミングよく動いて思い切り腕が振れている。緩いカーブ、キレ味鋭いスライダーもストレートと同じ腕の振りから投げることができていた。まさに奪三振ショー。7回1死までノーヒット。雷と雨で終盤に試合が中断したがまるでロッテ佐々木朗希投手の試合を見ているかのようなワクワクドキドキ感。2安打1失点で完投、20三振を奪ってみせた。

続く3回戦に勝利したが4回戦の川口市立戦は8失点でコールド負け。最速は142キロということだが、まだまだ伸びしろは十分と感じた。

バッターでは京都外大西・西村瑠伊斗外野手(3年)の長打力に驚かされた。大会前に日刊スポーツで二刀流選手として紹介され注目していた。

ネット中継で何度か見たが試合のたびに本塁打を打っている印象。1、2回戦で連続本塁打。3回戦こそ不発だったが4回戦、準々決勝で再び連続本塁打を放った。準決勝の龍谷大平安戦でも4回に三塁打を放った。5回2死三塁の同点機では申告敬遠。コールド負け寸前の7回2死一塁でも勝負してもらえずストレートの四球。結局8回コールド負けで甲子園出場はならなかった。

それでも大会タイの4本塁打を放ち高校通算54本塁打。日刊スポーツに掲載された西武渡辺久信GMのコメントが印象的だった。

「インコースのさばきが天才的。教えてできることではない」

最後に紹介したいのが横浜商(神奈川)のショートストップ、長野圭汰内野手(3年)。同選手のことはまったく知らなかった。公休日にぶらりと見に行った等々力球場での藤嶺藤沢戦。見事な守備に魅了された。

自宅から電車とバスを乗り継いで球場へ。日陰になる2階席で見るつもりだったが試合開始30分前なのに特等席は満員。仕方なく灼熱の3階席に陣取った。スタンドを見渡すと一塁側、三塁側スタンドとも応援団でぎっしり。今年からブラスバンドによる応援も復活。高校野球らしい雰囲気が戻ってなんだかとてもうれしくなった。

そしてプレーボール。ひときわ目立ったのが「Y校」伝統のライトブルーのユニホームに身を包んだ背番号「6」、横浜商の長野選手だった。

ゴロが飛ぶ、捕る、そして投げる。流れるような動き。何より素晴らしいのがスローイング。サイドハンドから素早く正確に一塁へ。懸命に一塁に走り込む打者走者。しかし長野選手のスローイングの前に、あと一歩のところでアウトにされてしまう。そう、巨人坂本勇人選手のような華麗な守備。

ショートにゴロが飛ぶたびに鮮やかなプレーが繰り返され、そのたびに満員のスタンドがどよめき、沸いた。

最終回、横浜商は2点を返され、さらに同点、逆転のピンチ。三塁後方にフライが飛んだ。三塁には走者がいる。レフト、サード、ショート、誰が捕るのか。バックホームを考えれば左翼手が捕った方がいいと思った瞬間、遊撃の長野選手が後ろ向きでキャッチ。振り向きざまに本塁へワンバウンドで返球した。一瞬のプレーに三塁走者は動けず。再びスタンドがどよめいた。

180センチ、65キロ。スラリとした大型内野手。打撃はまだまだ非力さが目立ったが、守備はまさに一見の価値あり。続く横浜創学館戦はテレビ観戦。敗れはしたがこの試合でも三遊間の難しいゴロを鮮やかにアウトにした。見事だった。

この夏、ネット中継(バーチャル高校野球)で多くの試合を見ることができた。まるでドラえもんの「どこでもドア」。トップページの日本地図で見たい地区をクリックすれば試合や注目選手をチェックできる。便利になった。

それでも、やはり球場に行って生で見るのが一番楽しい。長野選手の素晴らしい守備が、現地観戦の醍醐味を思い出させてくれた。

京都外大西・西村(21年7月撮影)
京都外大西・西村(21年7月撮影)