阪神の真の主砲として、大山悠輔内野手は揺るぎない立場を確立した。122安打、28本塁打、85打点。120試合へと短縮された今季の成績を通常の143試合に換算すると、それぞれ145安打、33本塁打、101打点を挙げていた計算となる。同一年にこれら3部門でそろって今季の大山以上の成績を残した阪神の選手は、6人で9度だけ。生え抜きでは別当薫、藤村富美男、岡田彰布の3人しかいない。全盛期の掛布雅之ですら記録できなかった数字である。新型コロナウイルスの影響で、試合数が少なかったことが惜しまれる。

開幕戦の屈辱が、負けん気に火を付けたのか。6月19日の巨人戦で、大山は“補欠”だった。試合には出場していない。三塁はマルテが守り、4番にはボーアが入っていた。2-3の逆転負けを、大山は控え選手として見届けた。そこからチーム1位の28本塁打。開幕戦を欠場した阪神の選手がその年のチーム最多本塁打者となったのは、93年に新庄剛志がオマリーと同数の23本塁打して以来、27年ぶりだ。単独となると、83年バース35本塁打以来37年ぶりの出来事である。もっとも新庄とバースはともに、故障のためシーズンは2軍スタートだった。開幕戦にベンチ入りしながら出場せず、そこから挽回するという極めて珍しいチーム本塁打王が生まれた。

主砲として求められる、勝負強さも身につけた。満塁で12度打席に立ち、9打数5安打の打率5割5分6厘。これは満塁で10打席以上に立った、セ・リーグ25打者中1位だ。9月8日DeNA戦では、プロ初の満塁本塁打をかっ飛ばした。余勢を駆って同18日中日戦で2本目のグランドスラム。満塁では18年1割5分8厘、19年1割4分3厘だったが、苦手意識はもう過去のものだ。来季は開幕戦から突っ走り、念願のタイトル獲得を果たしてほしい。【記録室 高野勲】