投球練習を行う斎藤友貴哉(2019年1月20日撮影)
投球練習を行う斎藤友貴哉(2019年1月20日撮影)

阪神の新人投手でただ1人1軍キャンプに抜てきされた。斎藤友貴哉(24)である。ホンダからドラフト4位で入団。新人の合同自主トレ初日から鳴尾浜球場で動きを追ってきたが、キャッチボールをしている時から、大きなフォームとバランス、球の勢いを目にして、即戦力の可能性を十分に秘めたルーキーと見た。ブルペンをのぞいた矢野燿大監督の目にも止まった。「真っすぐに力がある。1イニングを目いっぱい行く起用が面白いかな」中継ぎの期待まで口にした。

熱気に満ちた鳴尾浜球場を見渡してみる。各選手の動きが本格化してきた。キャンプ間近の雰囲気が充満。トレーニングに励む糸原、北條、才木ら主力の表情も厳しくなってきた中、球場に隣接する虎風荘(合宿所)で1月23日、合同スタッフ会議が行われ1、2軍のキャンプメンバーが振り分けられた。

斎藤には初の体験だが、プロ野球界はキャンプとはいえ1、2軍の振り分けは気にするもの。何分、実力の世界であり、競争社会である。選手各個がライバルであって、お互い常に意識しているからだ。振り分けの明暗はこれまで幾度となく見てきたが、我々の現役時代も競争意識を植え付けるために監督やコーチによく言われたのは「ええか、よう聞けよ。相手がいくら先輩であってもグラウンドではみんながライバルなんや。遠慮なんかするなよ。そのかわり、合宿所など私服になった時は先輩として礼儀正しく接するように」である。「この世界に入ったからには競争です」は斎藤だ。自覚してのプロ入り。なかなか頼もしいルーキーだ。

プロ野球の世界を生き抜いてきた人。矢野監督も心得ているが、今季の阪神、チーム力は全くの未知数。1シーズンを通してフルに自分の力を出し切れる実績の持ち主はわずかしかいない。ペナントレースを戦い抜くためにはチーム力のレベルアップは必要不可欠。新戦力の出現はノドから手が出るほど待ち望んでいる。そこで斎藤だ。「ベテランと中堅の競争の中に入ってきてくれるとね」は監督の願望だが、これからのキャンプ、オープン戦での力を見たい。

1軍キャンプを手にした。まずは第1段階の、首脳陣に直接アピールするチャンスをつかんだ。1軍定着の近道でもある。斎藤の気持ちは前向きだ。レベルアップへの向上心も旺盛で「正直うれしいですね。でも、これからですから」と気合も十分。そして「憧れの藤川さんを直接見てみたいし、ベテラン投手の人たちの経験など色々話を聞いて自分の力にしたいです。お陰さまで、ここまでケガもなく順調に来ていますので、キャンプでは大いにアピールしたいです」初体験には不安はつきものだが、弱気は禁物。目標は大きく、前進あるのみだ。

即戦力の期待。正直言ってまだこの時点で結論を出すのは難しいが、素材としては申し分ない。将来のエース候補。大きく育つためには今から色々な体験を積み重ねておくことが必要。中継ぎ、大いに結構。中継ぎとしてマウンドへ上がる場合は、チームの勝利、先発投手の勝利を背負って立つ。そして、試合の日は必ずブルペンでの待機が義務づけられ、3連投、時には4連投もある。厳しい役割はもちろん己の実績に反映する。この経験は先発投手としてローテーション入りした時に役立つ。それは、救援の体験によってリリーフ投手の気持ちがくめ、投手陣全体が見渡せるようになり、期待通りに大きく育てばメンタル面を含めた投手陣のリーダー的存在にもなれる。

「これから、開幕1軍を目指してガムシャラに頑張りたいと思います。中継ぎは社会人時代に3連投したこともありますし、連投を意識してブルペンには多めに入ります。目標は50試合登板です」休日を返上してトレーニングに励んだ。準備は万端。どん欲な姿勢が頼もしい。

少々持ち上げ気味の原稿になったが、1人のOBのただの戯れ言に過ぎない。明るい性格。もしプレッシャーになったとしてら、ウイニングショットの速球ではねのけてくれ。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

新人合同自主トレでダッシュする阪神斎藤友貴哉(2019年1月9日撮影)
新人合同自主トレでダッシュする阪神斎藤友貴哉(2019年1月9日撮影)