抹消明けの先発だった巨人菅野だが、エースの面影はなかった。2回1/3で4失点。この試合の登板内容は、今後の巨人だけでなく、五輪にも影響してくるだけに注目していたのだが、すぐに改善できるようには思えなかった。

まず、投球フォームに問題がある。投球練習の時点で「これは厳しいかも」と感じたほど。簡単に説明すると、体の開きが早く、下半身が使えていない。これが右肘や腰などが痛くて投球フォームが狂っているのか、もしくは痛くなくても気になって思うように投げられないのかは分からない。もし痛めているのならしっかり治し、その上で根本的な部分からフォームを見直さないといけない。

一番の改善点はテークバック。菅野の投球フォームは右肘が背中側に入りやすく、そのため右腕が振り遅れやすい。ボールを持つ手がトップの位置まで上がる前に上半身が出てしまい、左肩を開いてからでないと投げられない。こうなってしまうと、頭が突っ込み気味になり、軸足に体重が乗らず、下半身に粘りがなくなる。腕の振りだけで投げるから球威も上がらないし、シュート回転しやすくなる。打者からするとボールも見やすく、制球力も悪くなる。

本人にも自覚があるのではないか。一昨年、上半身を右側にひねってから投げるようにしてよくなっていた。ここは想像だが、最初からひねっておいて、それ以上テークバックが背中側に入らないようにしていたのだろう。しかし一時的には直っても、根本的な癖はなかなか直らない。本当に良くするのなら、テークバックそのものを小さくするか、背中側に右肘を入れず、セカンドベース方向に動かしながら体の前でテークバックを作ってトップの位置へ上げられるように改善した方がいい。

もうひとつの注意点は、左足を上げてから前に踏み出していくとき、頭が一緒に出ないように残すこと。言葉で説明するのは難しいが、ダルビッシュは昨年あたりからテークバックを小さくし、腕が振り遅れないように投げている。オリックスの山本は、ボールを持つ手をセカンドベース側に残すようにして右肘が背中側に入り過ぎないような投球フォーム。プライドはあるだろうが、自分に合うフォームをもう1度見直してみてはどうだろうか。

誰もが年齢を重ねると、思うような動きができなくなる。関節の可動域も違ってくるし、筋力の瞬発力も落ちてくる。微調整を続けることでごまかしていける部分もあるが、選手によっては大きく変えないと間に合わないタイプもいる。

1カ月ぐらいの調整期間を設けて、今の自分に合ったフォームをじっくりと見つめ直す期間を作った方がいいと思う。菅野という投手は、5イニングを2~3失点で抑えられればいいというレベルではいけない。まだまだ持ち直せる年齢だし、それだけの下地もある。このままの状態で登板を続けたり、五輪にいけば、本来の力を発揮できない可能性が高い。今試合は打線が爆発して逆転勝ちを決めたが、打線を助けて勝つのが本来の菅野であり、助けられて勝つような投手ではないと思っている。(日刊スポーツ評論家)