5月26日から2日間の日程で伊勢志摩サミットが開催されます。それより注目しているのは27日に米国オバマ大統領が広島にやってくることです。

 広島で何をするんだ、謝罪するのかどうなのか、と意見はさまざまでしょうが、戦後初めて米国の大統領が被爆地・広島を訪れることには大きな意義はあると思います。

 広島といえば、昨年の原爆記念日、8月6日のことを思い出します。「ピースナイター」として広島-阪神戦が広島マツダスタジアムで行われたその朝。祈念式典が行われている会場に、阪神に在籍していたマートンが足を向けました。

 過去に阪神の助っ人としてはブラゼルが資料館に行くなど無関心であったわけではないのですが、何しろ、当日に広島で試合をするのは最近のこと。タイミングが合わないので無理もないのですが、それでも遠巻きにとはいえ、式典に参加したプロ野球の助っ人を他に知りません。

 敬虔(けいけん)なクリスチャンであるマートンならではの行為だと強く思ったのです。

 そして今回。突拍子もない考えですが、オバマ大統領が広島に行く流れはこういうところからもできてきたのではないか、と思って仕方がありません。本人に聞いてみました。

 マートン オバマ大統領や政治的なことについてはよく分からないよ。でも、あの戦争で尊い命が犠牲になったことについて認識し、尊重するのは大事なことだと思う。特に罪のない人々の命が奪われたのはやるせない気持ちだ。だれが正しいのか、誰が間違っているのかということではなく、人を愛する、思いやるということが大事なんだ。

 ツテを通じて、メールを送って語学の達者な人に訳してもらいました。今季はカブスの3Aに所属しているマートンは現在、脇腹を痛めて戦線離脱しているようですが丁寧な返事をくれました。

 かつて激戦を繰り広げた日米ですが、野球を中心にスポーツは言うまでもなく、あらゆる場面で関係性の深い国同士になりました。もちろん、いいことばかりではなく、沖縄であってはならない事件が起きた今、両国間の問題を解消することは本当に難しいと思います。

 政治のことは、いろいろな意見があり、こういうコラムでは正直、書きにくいのですが、歴史の節目だけに触れてしまいました。何よりもまず、我々にとって大事なことはプロ野球を、ひいきのチームの応援を楽しめる今の状況に感謝しなければならないということだと思います。