美しい放物線だった。7月9日、甲子園でのヤクルト戦。0-0の8回裏。均衡を破り、勝ちにつながるアーチを描いたのはルーキー森下だった。
そのルーキーを試合後、肩に手をやり、ねぎらっていたのが佐藤輝だった。顔は笑っている。だが、その心中は? それを想像すると、やはり悲しく感じてしまう。
ひどい! 内容があまりにも悪い! まったく兆しが見えない! それが凝縮されていたのが、この試合の3打席目。無死一塁で大山三振。このあとだ。佐藤輝の打席。1球目、外角のストレートを見逃しストライク。2球目も同じコースのストライク。審判の判定に首を振り、見極めの悪さを露呈したあとの3球目。ボール球を挟むと思っていたのか、ストライクコースに投げ込まれた時は、すでに大幅に遅れていた。気のないスイング。着払いと表現されるタイミングのズレた空振りで3球三振…。まるで内容のない結果に本人はただ首を振るだけ。それをベンチから見つめた視線が…。監督、岡田彰布は何を感じ、どう思ったのだろうか。
岡田が森下の本塁打について「今日は中央(大学)デーと思って使った」と笑わせた。デーゲームの巨人-DeNA戦で、DeNAの牧が延長12回に決勝本塁打を放っていた。牧は中大出身で森下の先輩。それにかけての岡田の発言だったが、牧といえば佐藤輝と同期入団。大学時代は圧倒的に佐藤輝が有名だったが、プロに入って3年目。明らかにいまは差がついた。
シーズン序盤こそ出遅れたが、5月以降は躍進DeNAの象徴として打ちまくり、現在は打点でリーグトップ。着実に大きく成長を続けている。それに引き換え、佐藤輝はというと…。先に示した打席内容にあるような、同じことの繰り返しのバッティングばかり。クリーンアップの機能を果たせるわけもなく、打率は2割1分台にまで落ちた。低くなる打率、増え続ける三振。あの短いけれど、2軍での調整はどうなったのか。正直、先はまったく見えない。
7月10日付の関西のスポーツ新聞を何紙か読んだ。森下の記事が大きく扱われる中、ノーヒットの佐藤輝の記事はまったくなかった。悪くても取り上げられていたのに、それすらなくなった。これが見慣れた光景…。そういうことになっていたし、岡田も佐藤輝に関しては語っていない。
岡田が監督就任後、大山と佐藤輝のポジションを固定。打順も4番、5番と決め、これを動かさないと公言した。だが、一向に上向かぬ佐藤輝には打順を落としたり、先発を外したりした。そういったカンフル剤を用いて、刺激したが、その効果は表れず、ついに2軍行きを命じた。
これは佐藤輝にとって、大きなショックだったに違いない。修復にはかなり時間を要するとみられていた直後、思わぬアクシデントが。近本の骨折により離脱。明らかに得点力が落ちる。緊急事態に岡田は佐藤輝を呼び寄せた。
これまでとの変化は? これまでをどう見返すのか? さまざまな佐藤輝の逆襲のシナリオをイメージしたが、ここまでは無理だった。打席に入るまでの準備、打席の中での迷い。結果が出たあとの落胆とあきらめの顔つき。完全に自信を失い、迷路をさまよっている。そんな感じになっている。
このところの阪神の戦いは、攻撃力の欠如、それに尽きる。勝つには勝ったが、1-0の中身がそれを如実に表している。その象徴が佐藤輝だ。岡田はここまで、褒めたりけなしたり。さらに先発外しに2軍行きと、それなりに手を打ってきた。この先、どんなカンフル剤があるのか。オールスターまで残り6試合。ここまで岡田は我慢するのか。逆に、すぐにでも新たな策を用いるのか。このままなら、本当に平凡な選手になってしまう。【内匠宏幸】(敬称略)






