今季の甲子園最終戦は9月30日だった。試合前の練習中、監督の岡田彰布はベンチに座ったままだった。その周りを囲んでいたのが多くのベテラン記者。昔からの付き合いで、節目でのあいさつにきたということだった。
昔話に花が咲いた。こういう話、岡田は大好きだが、逆にいうと「岡田も年を取ったな」と改めて思った。年を重ねると、昔を懐かしむ。これが人間のあるあるなんだろう。
あと2カ月で67歳を迎える。年齢的に考えると、体力はいっぱいいっぱい。相当な負担がかかっている。それを岡田は素直に認めた。
「そらしんどい。ホンマにしんどいよ。特に遠征の時の移動やな。これが続くと、ガクッとくる」。岡田もさすがに老いを感じていた。しかし、いざ試合になると、疲れを忘れる。しんどさは消え、ゲームに集中する。「野球が好きなんやろな」と笑うように、野球のことを考える。その繰り返しの1年だった。
本社、球団と話し合ったことを認めた。オーナー、球団社長との3者会談が何度かあった。注目の去就問題。岡田はあえて先のことには触れなかった。「これからどうする…といった話を、こっちからはせんかった。目の前にCSがあるんやから。来年のことが(新聞に)出て、チームに影響を与えたらアカンから」。岡田は去就に関して、一切口にしなかった。
10月3日付の某スポーツ紙に報じられたのが岡田の退任だった。とうとう出たか。そんな感覚で、その紙面を読んだ。岡田退任の大きな見出しの横に、こうあった。後任に藤川球児が有力とあった。
これは「観測気球」なのか。マスコミがよく使う手に観測気球的なニュースがある。一発ぶちあげておいて、その反応を見る、といったものだが、今回はそれではないとすぐに判断できた。
ポイントは後任候補に挙がった藤川球児の名前である。藤川は報じたスポーツ新聞の専属評論家。自社と契約する評論家の名前を出す際は最後の最後、決定項として報じるのが定説。誤った報道ができないのだ。
このニュース記事によって、事態は大きく動き、進んでいく。「藤川監督」に向けて、スポーツ紙の報道は一気に加速していくだろうが、岡田はどう対応していくのか。残された目標がある。CSを勝ち抜き、日本シリーズに進む。そして日本一へ。「このCS制度ができた頃は、おまけのようなもの…という感覚だったけどな。でもいまは違う。せっかくのチャンスやんか。チャンスがある限り、そら目いっぱいやるよ。勝ちにいく。いまはそれしか頭にないわ」。
2008年、CSで中日に敗れ、涙を流してユニホームを脱いだ。あれから16年。岡田彰布の監督集大成は、どんな結末になるのか。それを見届けたい。【内匠宏幸】(敬称略)




