<みやざきフェニックス・リーグ:ロッテ5-4阪神>◇10日◇アイビースタジアム

日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)は10日、ロッテ-阪神戦をチェックした。阪神のドラフト5位、高卒ルーキー藤田健斗捕手(19=中京学院大中京)に注目し、そのプレーを解説した。

8番DHで先発出場し、6回裏から3イニング守備についた。まず、目についたのはキャッチング。ワンバウンドを後ろにそらしていた。また、ノーバウンドの捕球ミスもあった。

これは、上体で捕球に行こうとしているからで、体勢が前かがみになっている。上体から先に動くために、下半身の始動が遅れる。それが原因で、横にそれたボールや、高めに抜けたストレートへの反応も遅れてしまう。フォークボールがノーバウンドのまま股の間を抜けて後ろへ転がった場面もあった。

さらに細かく言うなら、右打者の外角にそれた投球に対し、藤田は右足を伸ばしたままブロッキングに行くから非常に窮屈な姿勢になる。そもそも、そんな体勢では素早く動くことも、外角球にも反応できない。

基本的なことだから、そこは繰り返し練習を重ねれば、すぐに正しい姿勢でのブロッキングは身に着く。今の藤田に必要なことは、たくさん受けて、ブロッキングの基本動作を体に染みこませることだ。

イニングの合間の投球練習では、印象に残る動作があった。投球練習の最後に藤田は二塁に送球するのだが、左足の使い方にまで気を配っていることがうかがえた。ソフトバンクの甲斐も同じステップをしているので、甲斐を参考にして自分のものにしようという意図があるのだろう。

捕球する前に左足をわずかに前に出す。およそ半足分出すのだが、それは盗塁を刺すためのかなり高度なテクニックと言える。走者がスタートを切ったことを確認し、投球を捕球する前に半足分だけ左足を前に出す。考えている時間はなく、とっさの判断の中で動かないとすべてがバラバラになってしまう。捕球した時には右足にかかっている重心を、いかにスムーズに左足に移しながら、素早く正確にスローイングできるか。

藤田はイニング間の投球練習ではこの動きを実践していた。ただし、練習のボールと、試合中のボールでは大きく異なる。練習のボールは緩く、投手はほぼ真ん中に投げてくる。それが試合中になれば生きたボールになる。その中でこの動きを正確にこなさなければならない。

例えば、捕手の右側にボールがそれた時、左足をやや前に出していることで、体重移動がしづらくなり、その結果として速く正確なスローイングができないケースも出てくる。実戦で使いこなせるようにするには、どんどん試合の中でチャレンジするしかない。そういう部分に意欲的に取り組む点に、藤田の研究熱心さが伝わってくる。球界でもこの技術を自分のものにしている捕手はそうは多くない。甲斐や炭谷など数えるくらいしかいない。

また、バッティングでも目を引く場面があった。2点負けている状況で迎えた6回無死一、二塁。カウント2-2から、左投手の膝元へ食い込んでくるスライダーを空振り三振するのだが、明確に右へ打とうというスイングをしていた。

ヒットは打てなくても、最悪でも右方向へ打って1死一、三塁の形をつくろうという狙いをもったスイングだった。状況判断を意識しているからこそのスイングと言えた。結果三振となるのだが、右打者にとって、左投手が膝元へ投げこんでくるスライダーを、右へ打つのは非常に難しい。こうしたところでも、今はまだ技術が追いついていないが、意図を持ったプレーをしようという姿勢は評価できる。

キャッチングという明確な強化ポイントはあるが、こうした高い意識で実戦を積んでいけば、自ずと捕手としての力量は伸びていく。これからのプレーもチャンスがあれば注目していきたい。

11日は予備日。12日はオリックス-DeNA(SOKKEN)からリポートする予定だ。(日刊スポーツ評論家)