<イースタンリーグ:ヤクルト2-2DeNA(延長11回)>◇27日◇戸田

高校野球の甲子園大会から戻り、再び2軍戦に足を運ぶ田村藤夫氏(62)は、DeNAのドラフト2位、大卒1年目ルーキー徳山壮磨投手(23=大阪桐蔭-早大)のピッチングに改善点を見いだした。

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6回2/3を2安打無失点という内容だった。3三振4四球。どうだろう、こうして数字を見ると、2安打無失点に目が行くのではないだろうか。それにしては、どこかスッキリしない。最速151キロ右腕のどこかにその原因があるはずだ、と思案した。

この試合が始まるまで、ファームで14試合に登板し、10試合に先発している。2勝5敗、防御率は3・60。各球団の編成担当がいたので聞いたところ、この日のピッチングはこれまでの中でも比較的内容はいいという感想だった。

試合中、気になった点がある。四球の出し方に、釈然としなかった。

1個目 初回1死三塁から3番打者にストレートの四球。

2個目 2回1死走者なしで7番打者にストレートの四球。

3個目 4回2死走者なしで6番打者にフルカウントから。

6回 先頭の3番打者にフルカウントから。

やむを得ない四球というものもある。例えば同点の試合終盤、ヤクルト村上に2死走者なしで打席が回ってきたとする。慎重に投げて、結果として四球ならば、それは勝つためには必要な戦術の一環と言えるだろう。

また、仕方ないでは済まされないが、突如として制球が乱れ、ストライクが入らなくなることも、プロの世界でも見る光景だ。四球、四球で押し出しというケースすらある。まだ自分のメンタルをコントロールできない投手にはあり得る現象で、こうなると試合は壊れてしまう。

この日の徳山のピッチングには、特定の場面だけ四球を与えてしまう傾向のようなものを感じた。ボールが荒れ出して制球がきかなくなり、どうすることもできない、そんな風には見えなかった。四球を出しても後続打者を抑えており、そこまで乱調ではなかった。

ならば、簡単に四球を与えているのか? ということになる。外から見れば、簡単に四球を与えていると見られてしまう。もちろん、徳山が簡単に四球を与えているとは考えていない。どのピッチャーも、四球を出す時、敬遠を除いては自分でも苦々しく思っているはずだ。

そうした背景を踏まえて指摘するなら、1個目の1死三塁のケースは、慎重にいった末の四球と考えられなくもない。三塁打を打たれ、3番打者に対し、先制点を与えたくないがためにコースを狙い、結果としてストレートの四球という流れも、あり得るだろう。

2個目から4個目の四球は、徳山にとってはいずれ克服しないといけない課題になる。7番打者にストレートの四球や、2死走者なしで6番打者に四球、先頭打者に四球では、明らかに守っている野手に勢いはつかない。リズム良く守って攻撃へ。これがいわゆる守りから攻撃へ、好循環を生む流れだ。徳山の四球は、本人は意図していないだろうが、そういう好循環を詰まらせる四球になっている。

2勝5敗という数字にも、そうした部分が影響しているのではと感じる。この試合を含め71回2/3で、38四球では、単純計算でも2イニングに1個は四球を与えていることになる。その中に、やむを得ない四球がいくつあるか? そうはないだろうと想像はつく。

151キロの真っすぐがあり、フォーク、スライダー、カーブもある。だが、151キロというスピードの割に、私の目には速さは感じなかった。おそらくスピン量などがかかわっているのではないか。ファウルは取れるが、ほとんど空振りは取れていなかった。

大卒1年目、少なくとも2軍で登板数をこなし、どんどん実戦でピッチングを磨く時期だろう。性急になにかをいじる必要はない。ただ、四球に対する考え方はもっとシビアに持つべきだ。これは本人にしかわからない感覚だろう。出したくないのに与えてしまう四球に対し、徳山が苦しむ理由はあるはずだ。それを、どこまでも掘り下げて打開策を考えない限り、同じ事が繰り返される。

若手投手が、チャンスをもらった1軍で四球に端を発して崩れていく場面を、私はいくらでも見てきた。制球がないから四球を出すのか、油断や安心感から出してしまうのか、技術的な問題か。それら全部が原因かもしれない。

ルーキーの2安打無失点ピッチングを見て、抑えた結果ではなく、4四球の方が心に残ったのも、自分としては意外だった。この四球には、改善しなければいけないポイントが凝縮されている。捕手特有の心配性が、そう警鐘を鳴らしているのかもしれない。徳山にはよく考えてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)