<イースタンリーグ:日本ハム4-2ヤクルト>◇25日◇戸田

今年のファームも残りわずかになった。来月には宮崎でフェニックスリーグが始まる。若手選手は成長へのきっかけをつかむ重要な時期に入る。田村藤夫氏(62)はヤクルトのドラフト5位高卒ルーキー竹山日向投手(18=享栄)に、オーソドックスな投手像への飛躍を感じた。

    ◇    ◇    ◇

今年も戸田のグラウンドには何度も足を運ばせてもらった。そして今日も竹山を見ることができて良かった。ボールに力がある。初めて見たのだが、この先が楽しみだ。

楽しみだと言っておきながら、課題から先に指摘するのも気が引けるが、これはオフに向け強く意識して取り組んでもらいたいことだ。力を抑えた真っすぐでカウントを取ろうとしているように見えた。初回、3四球で苦しくなる。最速152キロのスピードがあり、そして力もある。それが、制球に自信がないがゆえに142キロほどの真っすぐでカウントを取ろうとしている。

気持ちは分かる。高卒ルーキーにとって、ファームは自分の力をアピールする最高の舞台だ。そこで結果を出したい。四球を恐れカウントを整えようする。今の竹山の制球力では、こうなるだろうなと、感じた。

しかし、ここにこそ竹山が突破すべき壁がある。コントロールがあるとは、目いっぱい腕を振って、狙ったコースに投げることを言う。もちろん、1軍の主力クラスでさえ、このコントロールを確率高く実行するのは至難の業だ。だが、そこにトライしなければ、プロでは通用しない。

力を抑えた真っすぐは、2軍でも通用しない。竹山の真っすぐの威力は、いわば岐路にあるとも言える。このまま真っすぐを磨かずに輝きを少しずつ失ってしまうか、もしくは、ドラフト5位がそれこそ1位をもしのぐほどのほれぼれする真っすぐで1軍へのチャンスをつかむか。

竹山は3回を1安打1失点。私は3回の先頭打者阪口との対戦に目を見張った。同じ高卒ルーキーで、竹山は享栄、阪口は岐阜第一。愛知と岐阜だけに、おそらく対戦経験があるのだろう。竹山は全球真っすぐで勝負に挑んだ。

初球空振り、2球目見逃しストライク、3球目ファウル。そして4球目、外角真っすぐ。高さはややベルト付近と高かったが、コースが良かった。これを阪口も果敢に振って空振り三振。高卒ルーキー同士の意地を前面に出した見事な対決だった。竹山は3球目の真っすぐで勝負に行っており、3球勝負は明らかだった。

この勝負での4球の真っすぐは、いずれも全力で腕を振った真っすぐだった。なかば置きにいくような真っすぐとは明確に違った。ボールに力があった。それはそうだろう。阪口を真っすぐで抑えるという意欲がみなぎっていた。この気迫を、初回から相手がプロ経験でキャリアのある選手相手でも、出せるはずだ。

要は竹山にその心構えがあるかどうか、だろう。阪口に対する時と同じ気持ち、準備、狙いで投げ、はじめて制球がどこまで実践でき、できないかが見えてくる。例えば、左打者へのアウトコースにはしっかり腕を振っても投げきれる。右打者へのアウトコースもできる。しかし、左打者への内角は甘くなる、右打者への内角はまだ技術が足りない、など。

自分がどこのレベルにあるかは、力のある真っすぐを持つ竹山ならば確かめることはできる。力を抜いたボールは必要ない。まず、そういうボールを使わずに済むよう、日々の練習から腕を振る、そして制球する。この精度を突き詰めてほしい。

竹山の球種は真っすぐに、カーブ、スライダー、そしてフォークもしくはスプリット。この組み合わせを、大切にしてもらいたい。昭和生まれで、平成のパ・リーグで鍛えられた捕手の郷愁だと言われると、返す言葉もないが、カットボール、ツーシームに頼りがちな今どきのピッチングスタイルには思うところもある。変化球がたくさんあるのは、打者からすれば難しくなるとは思うが、やはり私の世代からすれば、オーソドックスな持ち球の竹山には、どこか親近感が出てくるのも正直なところだ。

真っすぐを大切に磨き、その真っすぐを軸に、カーブで緩急を、スライダーで幅を、そして落ちる球を決め球に。オーソドックスなピッチングスタイルを大事にしてほしい。決してカットやツーシームを否定する意図はないが、若い投手の多くがプロ入りの早い時期から、こうした変化球で打たせるピッチングに流れていく姿を、やや複雑な思いで見ていた。

キャリアを積み、どうしても真っすぐ主体のピッチングに限界を感じた時、はじめてカットやツーシームを試しても遅くはない。それまでは、腕を全力で振って制球した真っすぐを軸に、どんどん攻めのピッチングにトライしてほしい。打たれることもあるだろう。だが、その先に竹山ならではのピッチングスタイルが必ず見えてくるはずだ。(日刊スポーツ評論家)