<イースタンリーグ:日本ハム2-2DeNA(延長11回)>◇13日◇鎌ケ谷

DeNAのドラフト4位、高卒ルーキー左腕の森下瑠大投手(18=京都国際)が先発。5回を投げ4安打1失点、5奪三振1四球と好投した。

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高卒ルーキーのピッチャーを見ると、いろいろ感じるところはある。真っすぐの球質が目につくことがあれば、フィールディングを含めた総合力に可能性を見いだすこともある。

どこに特長があり、これからどんなピッチャーになっていくのか。そんなイメージを膨らませながら見るのが、若いピッチャーを見る時の楽しみだ。

そういう視点から言えば、この日の左腕森下のピッチングは、すぐにスライダーが大きな武器になるだろうと感じた。

ちょっと表現は悪くなるが、右バッターの膝元へのスライダーがいい。本当にくそボールなのだが、打者目線からすれば、一瞬消えるように感じるのだろう。

どうしてあのボールを振るのだろうと、見ていたファンの方は思ったかもしれない。その「なぜあのボールを? どうして?」が、実は森下がプロで生き抜く上での最大の強みになり得るのだからおもしろい。

おそらく、森下自身にもそうした自信はあるのだろう。自信を持って堂々と投げ込んでいた。真っすぐの最速は144キロ。高卒ルーキーとしてはまずまずの球威。その球威で右打者も、左打者も内角をしっかり突いていた。

この真っすぐがあるから、特に右打者は膝元へのスライダーに反応してしまう。ベース板付近でのキレが非常にあるのだろう。ミットの位置は明らかにボール球と感じさせるのだが、肝心の打者の目線からはストライクゾーンを通っていると見えているはずだ。

こういうボールを投げる左腕は、本当に強い。私はすぐにオリックスで活躍した左腕・野村貴仁を思い出した。野村のスライダーは素晴らしかった。腕の振りが鋭く、それにバッターは惑わされる。明らかなボール球を、パ・リーグの強打者がおもしろいように空振りしていたシーンが思い出された。

森下のスライダーもそんな魔球になる可能性を秘めている。分かっているのに振ってしまう。ある意味、これに勝る勝負球はないだろう。この試合、スライダーで4つの三振を奪っている。右打者が1個、左打者3個。

右打者の膝元を突き、左打者には外角へ逃げていくボールで空振りを奪っていた。球速は130キロそこそこ。このボールを磨いていけば、森下の先発投手としての未来は明るいものになるだろう。

もちろん、真っすぐはさらに強さを増し、精度も高めなければならない。この日バッテリーを組んだ戸柱は、左打者の内角にもどんどん要求していた。

そこへ投げる精度を持っていると信頼しているからだろう。そこへ真っすぐがかなりの精度で投げられるようになると、外角のスライダーはより効果的となり、ピッチングの幅が生まれる。

今のスライダーは、スピードよりもキレで勝負している印象だ。そこに球威を増した真っすぐが合わさり、さらにスライダーのキレに球威が増してくれば、1軍打者も相当手を焼くはずだ。

強みを大切に、ここからどこまで成長していくのか。次、見るのが本当に楽しみな左腕を発見した気持ちになった。(日刊スポーツ評論家)