小倉(北九州市民球場)で懐かしい人に会った。カズ山本こと、ホークスで活躍した山本和範氏だ。

 1994年。恐怖の2番打者として活躍。バントのない根本野球の代名詞としても活躍した。

 「今は、ハプニングがあんまりないから面白くないなあ。閉店間際の何とかがないとなあ」

 勝ちパターンは確立。リードを保つと方程式が、数式通りの答えをはじき出す。

 「やっぱり、ハプニングがないとね」

 そう言ってガハハと笑って試合前に球場を後にした。

 94年シーズン後半。カズ山本にバントのサインが出た。西武戦だった。マウンドには工藤公康。前かがみでバットを構えたカズ山本の頭部に投球が当たった。頭部死球。今なら投手は一発退場。一騒動あったが、プレーは再開された。険悪な雰囲気の中、一塁ベンチで大笑いしていたのは、助っ人ライマーだった。

 「あれは、ど真ん中のストライクだ!」

 マウンドの工藤投手も死球ながら、目をパチクリさせていた。

 まあ、そんなことを思い出しながら、19日、今季ラストの小倉の試合を見ていたら、あらら。シーソーゲームを「閉店間際野球」で打ち勝った。8回に4連打を含む5安打を浴びせ4点…。

 恐るべし、カズ山本!!

【佐竹英治】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)