甲子園球場の横の広場で楕円(だえん)球を投げ合っている親子を見たときは驚いた。日本代表が8強に入ったラグビーW杯後の光景である。最近もオリックスの球団施設がある大阪・舞洲で転がるラグビーボールを追いかける男の子がいた。

子どもは強さにあこがれる。この冬は花園で全国高校ラグビーを取材したが、地方にも確かな熱となって押し寄せている。初戦で敗れた坂出第一(香川)の宮田貴司監督は「まだ決まっていませんが、20年は今までにない人数が入る予定です。未経験者でもラグビーをしたいという連絡がビックリするくらい来ている。W杯の影響は大きいと思います」と明かした。例年の新入部員は5人前後だが倍近くの希望者がいるという。

選手数の確保は全国を勝ち抜く上で欠かせない。初戦で敗退した旭川龍谷(北北海道)の小西良平監督は「(部員を)増やしたい。1回戦を突破するチームは、だいたいすごい多い人数なので。なんとかしたい」と話していた。3年生9人のうち、入学時の経験者は1人だけ。それでも、全国まで駒を進めた。日本ラグビー協会は21年秋の発足を目指した新たなプロリーグ構想を温めるなか、裾野が広がる予兆を感じ取れた。

普段はプロ野球を取材する。1月21日は甲子園歴史館運営会議へ。顧問を務める、元阪神監督の吉田義男氏は「野球が栄えるということが大事なこと。少子化とか競技人口が少なくなるとか、いろんな問題もあります。オリンピックもパリではやらない」と説明し、今後の行く末を懸念していた。中体連調べでは軟式野球を行う中学生は10年の29万人が19年は16万人に激減。長年、国民的な人気を集めた野球も安泰ではない。

子どもは魅力のあるスポーツに目が向く。ラグビーか、サッカーか、あるいはバスケットボールか…。今夏、行われる東京五輪も将来のスポーツ像を描く、大きな分岐点になりそうだ。【酒井俊作】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)